RAID 10(ストライピング+ミラーリング)(レイドテン)
英語表記: RAID 10 (Striping + Mirroring)
概要
RAID 10は、高速性を追求するRAID 0(ストライピング)と、高い耐障害性を持つRAID 1(ミラーリング)を組み合わせた「ネステッドRAID(複合RAID)」と呼ばれる技術です。これは、ストレージ冗長化と保護の分野において、パフォーマンスと信頼性の両立を最高レベルで実現するために開発されました。最低4台の物理ディスクが必要ですが、特に高いI/O性能と即座のデータ復旧能力が求められるミッションクリティカルなシステムで採用される、非常に信頼性の高い構成です。
詳細解説
RAID 10は、単にRAID 0とRAID 1を並列に動作させるのではなく、特定の順番で機能を「入れ子(ネスト)」にすることでその真価を発揮します。この技術は、ストレージデバイスの性能を最大限に引き出しつつ、同時にデータ保護を行うという、RAID 技術の究極的な目標を追求しています。
動作原理と構成
RAID 10の正式な構成は「RAID 1のグループをRAID 0でストライピングする」という順序を取ります。
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第一段階:ミラーリング(RAID 1)
まず、物理ディスクを2台ずつペアにし、それぞれのペア内で同じデータを完全に複製(ミラーリング)します。これにより、各ペアは単一の論理ディスクとして機能し、片方のディスクが故障してもデータは失われません。これが「冗長化」の基盤となります。 -
第二段階:ストライピング(RAID 0)
次に、このミラーリングされた論理ディスクのグループ全体を、高速なデータアクセスを実現するRAID 0(ストライピング)として構成します。データは複数のミラーリンググループに分散して書き込まれるため、読み書きの速度が劇的に向上します。
高速性と耐障害性の両立
この構成の最大の魅力は、RAID 0による高速なデータアクセス(特にランダムアクセス性能)と、RAID 1による高い耐障害性の両方を享受できる点にあります。
- パフォーマンスの向上: 複数のディスクにデータを分散させるため、特に読み込み処理において、アクセス速度が向上します。これは、ストレージデバイスがボトルネックになりやすいデータベースサーバーなどでは非常に重要です。
- 高い耐障害性: RAID 10は、ミラーリンググループ内で同時に複数のディスクが故障しない限り、システムは稼働し続けます。例えば、異なるミラーリングペアから1台ずつ故障した場合は、合計で半数(例えば4台構成なら2台)のディスクが失われてもデータは保護されます。これは、ストレージ冗長化と保護の観点から見て、非常に強力な特性です。
- リビルドの迅速性: ディスクが故障した場合のデータ復旧(リビルド)が、パリティ計算が必要なRAID 5やRAID 6に比べて非常に速いのも特徴です。故障したディスクと同じミラーリンググループ内の健全なディスクからデータをコピーするだけで済むため、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。これは運用担当者にとって本当に心強い要素です。
デメリット
素晴らしい性能を持つRAID 10ですが、欠点もあります。それは「コスト効率」です。データのミラーリングのために、使用可能な容量は物理ディスク総容量の50%に制限されます。例えば、4TBのHDDを4台使用した場合、利用できる容量は8TBであり、残りの8TBは冗長化のために使われます。大容量が必要な環境では、コストが大きな課題となる可能性があります。しかし、速度と信頼性が最優先されるシステムにおいては、このトレードオフは受け入れられることが多いです。
具体例・活用シーン
RAID 10は、その高性能と高信頼性から、特にI/O負荷の高い環境や、ビジネス継続性が極めて重要視されるシステムで活躍しています。これは、昨今の高性能なSSDやNVMeの速度を最大限に活かしつつ、データの安全性を担保する理想的な構成と言えます。
活用シーン
- 大規模データベースサーバー: 頻繁なランダムアクセスが発生するデータベース環境では、RAID 10の高速な読み書き性能がボトルネック解消に直結します。
- 仮想化環境(VDI/VMware/Hyper-V): 多数の仮想マシンが同時に動作する環境では、ストレージへのアクセスが集中します。RAID 10は、多くのユーザーに対して安定したパフォーマンスを提供するために最適です。
- トランザクション処理システム: 金融取引やEコマースなど、一瞬の遅延も許されないリアルタイムトランザクション処理を行うサーバーのストレージ保護に用いられます。
アナロジー:ダブル・チーム配達システム
RAID 10の動作を理解するために、ある運送会社の「ダブル・チーム配達システム」を考えてみましょう。このストーリーは、データがどのように保護され、迅速に処理されるかを示しています。
この運送会社は、迅速な配達(ストライピング=RAID 0)と、絶対に荷物を失わないこと(ミラーリング=RAID 1)を目標としています。
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チーム編成(ミラーリング):
まず、配達エリアを分割し、各エリアに2人1組の「ミラーリングチーム」(例えば、チームA:太郎と次郎、チームB:花子とさくら)を配置します。太郎と次郎は常に同じ荷物を積み、同じルートを走ります。これがミラーリングです。もし太郎のトラックが途中で故障しても、次郎がすぐに代わりに対応できるため、そのエリアの配達は止まりません。 -
エリア分割と同時進行(ストライピング):
次に、本社(CPU/コントローラ)は、大量の注文が入った際、注文を半分に分け、チームAとチームBに同時に振り分けます。チームAはエリアX、チームBはエリアYを担当します。これがストライピングです。
この「ダブル・チーム配達システム」では、もしチームAの太郎のトラックが故障しても、次郎がすぐに引き継ぐため、配達速度は落ちますが、停止はしません。さらに、もしチームA全体が何らかの理由で機能しなくなっても、チームBはエリアYの配達を継続できます。
RAID 10はまさにこの構造と同じです。ミラーリングで局所的な障害に強くし(データ保護)、そのミラーリングされたグループ全体を高速に並列処理させる(パフォーマンス向上)ことで、ストレージ冗長化と保護の理想形を実現しているのです。特に、リビルド(故障時の復旧)の際、次郎のトラックからデータをコピーするだけで済むため、復旧が非常に速い、というのがこのシステムの素晴らしい利点です。
資格試験向けチェックポイント
RAID 10は、特に応用情報技術者試験や高度試験で問われる可能性が高く、ストレージ冗長化と保護の知識を測る上で重要な論点です。以下のポイントをしっかりと押さえておきましょう。
- 構成ディスク数: 最低4台のディスクが必要であることを確認してください。これは、RAID 1ペアを2つ作り、それをRAID 0で結合するために必須の条件です。
- 容量効率: 利用可能な容量は常に物理ディスク総容量の50%となる点を覚えておきましょう。これは、パリティを使用するRAID 5やRAID 6との大きな違いとして問われやすいです。
- RAID 01との区別: 非常に重要です。RAID 10(ミラーリング+ストライピング)は、RAID 01(ストライピング+ミラーリング)とは異なります。RAID 10は障害発生時の再構築(リビルド)範囲が狭く、耐障害性において優れているため、実運用ではRAID 10が推奨されます。この違いは試験でも頻出するポイントです。
- 目的: 「高速なアクセス性能」と「高い耐障害性」の両立が最大の目的である点を明確に理解してください。どちらか一方を重視するRAIDレベル(RAID 0, RAID 1)の欠点を補うために生まれた技術であると認識しておくと、体系的に覚えやすいです。
- 文脈の理解: RAID 10は、ストレージデバイスの信頼性と速度を両立させるためのRAID 技術の進化形として位置づけられています。この文脈を理解することが、応用的な問題に対応する鍵となります。
関連用語
- 情報不足
- RAID 0 (ストライピング)
- RAID 1 (ミラーリング)
- RAID 5
- RAID 6
- ホットスペア
(現時点では、RAID 10を理解する上で不可欠な上記以外の具体的な関連用語に関する情報が不足しています。特に、RAID 10と比較されることの多いRAID 01や、障害発生時に自動で組み込まれる「ホットスペア」の概念は、この文脈で非常に重要となります。)
