Storage Spaces（ストレージスペース）

2025年10月26日

Storage Spaces（ストレージスペース）

英語表記: Storage Spaces

概要

Storage Spaces（ストレージスペース）は、Microsoft Windowsが提供する機能で、複数の物理ストレージデバイス（HDDやSSDなど）を統合し、データの冗長化と保護を実現するためのソフトウェア RAID技術です。これは、安価な複数のドライブをまとめて一つの大きな「記憶域プール」として扱い、そこから必要な容量と耐障害性を持った仮想ディスク（ストレージスペース）を作成する仕組みです。この機能は、まさに「ストレージ冗長化と保護」をソフトウェアの力で実現する現代的なアプローチであり、特にサーバー環境やデータ保護を重視するPCユーザーにとって非常に心強い存在なのです。

詳細解説

Storage Spacesがなぜ「ストレージデバイス（HDD, SSD, NVMe）→ ストレージ冗長化と保護 → ソフトウェア RAID」という分類に完璧にフィットするのか、その目的、主要なコンポーネント、そして動作の仕組みを詳しく見ていきましょう。

目的と背景

従来のRAIDシステムは、専用のハードウェアコントローラが必要な「ハードウェアRAID」が主流でした。しかし、Storage Spacesは、OS（Windows）の機能として提供されるソフトウェア RAIDであり、特別なコントローラを必要としません。その最大の目的は、ストレージデバイスが故障した場合でもデータが失われるのを防ぐ冗長化を提供すること、そして異なる容量や種類のドライブを柔軟に組み合わせて利用できるようにすることです。これにより、ユーザーは手持ちのストレージ資産を最大限に活用し、データを安全に守ることができるわけです。これは、データの重要性が高まる現代において、非常に理にかなった機能だと感じます。

主要コンポーネント

Storage Spacesを理解する上で、鍵となるコンポーネントは以下の二つです。

記憶域プール (Storage Pool):
これは、Storage Spacesの土台となる部分です。PCに接続されている複数の物理ドライブ（HDD、SSD）を一つにまとめた論理的な集合体を指します。容量やメーカーが異なるドライブを混ぜて格納できる点が大きな特徴です。このプールこそが、私たちが利用可能な「ストレージ資産」全体を表しているのです。
仮想ディスク / ストレージスペース (Virtual Disk / Storage Space):
記憶域プールから切り出して作成される、実際にデータが書き込まれる領域です。ユーザーはこの仮想ディスクに対してファイル操作を行います。仮想ディスクを作成する際に、データの冗長化方式（耐障害性）を指定します。

動作の仕組みと冗長化方式

Storage Spacesでは、仮想ディスクを作成する際に、以下のいずれかの冗長化（耐障害性）方式を選択できます。これは、分類の中核である「ストレージ冗長化と保護」を具体的に実現する部分です。

シンプル (Simple/None): 冗長化を行いません（RAID 0に相当）。パフォーマンスは向上しますが、ドライブが一つでも故障するとデータは失われます。重要なデータには絶対に使ってはいけない方式です。
ミラー (Mirror): データを複数のドライブに複製します（RAID 1やRAID 10に相当）。例えば、2方向ミラーリングではデータが2箇所に保持されるため、1台のドライブが故障してもデータは安全です。3方向ミラーリングを選べば、さらに強力な保護が得られます。これは、データ保護を最優先したい場合に最適です。
パリティ (Parity): データに加えてパリティ情報（誤り訂正符号）を分散して書き込みます（RAID 5やRAID 6に相当）。ミラーに比べて使用できる容量効率が良いのが特徴ですが、書き込みパフォーマンスはやや劣ります。大容量のアーカイブデータなどを扱う場合に重宝しますね。

これらの方式を、OSの機能として柔軟に設定できる点が、Storage Spacesが「ソフトウェア RAID」として優れている証拠です。

具体例・活用シーン

Storage Spacesは、専門的なサーバー環境だけでなく、一般のPCユーザーが家庭で重要なデータを守る際にも非常に役立ちます。

活用シーンの具体例

ホームサーバーでの写真・動画アーカイブ: 家族の思い出の写真や動画は失いたくない最重要データです。数年かけて買い足した複数の外付けHDDを「記憶域プール」にまとめ、ミラーリング構成の「ストレージスペース」を作成すれば、どれか一つのHDDが壊れてもデータは守られます。
中小企業のファイルサーバー: 複数の安価なSATAドライブを用いて、パリティ構成のStorage Spacesを構築すれば、コストを抑えつつ高い耐障害性を実現できます。高価なハードウェアRAIDカードは不要です。

初心者向けのアナロジー（貯水池とバケツの物語）

Storage Spacesの概念を理解するために、「貯水池とバケツの物語」を考えてみましょう。

あなたは複数の小さな貯水槽（物理HDD/SSD）を持っています。一つ一つは頼りないかもしれませんが、これらをすべて集めて巨大な「記憶域プール」（大きな貯水池）を作ります。この大きな貯水池は、すべての小さな貯水槽の水を合わせ持っている状態です。

さて、この貯水池から、実際に利用する水（データ）を取り出すための「仮想ディスク」（特別なバケツ）を作ります。

もしあなたが「ミラーリング」というバケツを選んだなら、それは非常に安全なバケツです。なぜなら、そのバケツに入れる水（データ）は、自動的に貯水池の中の異なる場所（異なる物理ドライブ）に二重に保存されるからです。仮に貯水池の一角（HDD 1台）が干上がってしまっても（故障しても）、もう一方の場所から水を取り出せるため、データは保護されます。

このように、Storage Spacesは、複数の物理的な資源（貯水槽）を論理的に統合し（貯水池）、その上で安全な利用方法（特別なバケツ）を提供する、非常に賢いシステムなのです。

資格試験向けチェックポイント

Storage Spacesは、特に応用情報技術者試験やその上位試験において、ストレージ技術や冗長化の文脈で出題される可能性があります。ITパスポートや基本情報技術者試験でも、「ソフトウェアRAID」の具体例として問われることがあります。

| 試験レベル | 典型的な出題パターンと学習のヒント |
| :— | :— |
| ITパスポート | 「ソフトウェアRAID」や「冗長化」の選択肢として登場することがあります。Storage SpacesがWindowsの機能であり、データを保護するための仕組みであることを理解しておきましょう。 |
| 基本情報技術者 | Storage Spacesを構成する主要な要素（記憶域プールと仮想ディスク）の役割を問う問題が考えられます。また、ミラーリングやパリティといった冗長化方式が、それぞれどのRAIDレベルに相当するのか（あるいはその代替機能であること）を把握しておくことが重要です。 |
| 応用情報技術者 | システム構成図の中で、Storage Spacesを用いたストレージ設計の優位性（コスト効率、柔軟性）を問う問題が出ることが予想されます。特に、ハードウェアRAIDとの違い、および記憶域プールに異なる種類のドライブ（HDDとSSDなど）を混在させる運用（階層化ストレージ）の可能性についても知識を持っておくと有利です。これは「ストレージ冗長化と保護」の応用問題として頻出するテーマです。 |
| 共通の対策 | Storage Spacesは、あくまでOSが提供するソフトウェア機能であることを強調して覚えてください。これにより、ハードウェアRAIDコントローラが故障した場合の復旧手順など、ハードウェア依存の問題から解放されるメリットがあることを理解しておきましょう。 |

Storage Spacesは、単なる機能名として覚えるのではなく、「ストレージの冗長化と保護を、OSレベルのソフトウェアで実現する技術」という文脈で捉えるのが、試験対策のコツです。