ジャーナリング

ジャーナリング

ジャーナリング

英語表記: Journaling

概要

ジャーナリングとは、ファイルシステムがストレージデバイス(HDDやSSD、NVMeなどの物理媒体)にデータを書き込む際、システムの途中で障害が発生しても、ファイル構造の整合性(一貫性)を保つための非常に重要な仕組みです。データを実際に書き込む前に、その操作内容を「ジャーナル(履歴やログ)」として専用の領域に記録しておく点が特徴です。これにより、突然の電源断やシステムクラッシュが発生した場合でも、ファイルシステム全体が破損するのを防ぎ、迅速かつ安全に復旧作業を行うことができます。この技術は、ファイルシステムと論理構造、そしてデータ整合性を結びつける、まさに中核的な役割を担っています。

詳細解説

目的と背景:なぜ整合性が失われるのか

私たちは、ストレージデバイスにデータを保存する際、それが瞬時に安全に書き込まれると期待していますよね。しかし、ファイルシステムがデータを書き込む操作は、実際には複数のステップからなる非常に複雑な処理なのです。

例えば、ファイルを新規作成する場合を考えてみましょう。システムは以下の複数の処理を順次実行する必要があります。

  1. ファイルデータ本体をストレージの空き領域に書き込む。
  2. ファイルを管理するための情報(ファイル名、サイズ、作成日時など)である「メタデータ」を更新する。
  3. ディスク上の空き領域管理情報(どこが使用中になったか)を更新する。

問題は、これらの複数のステップが完了する前に、もしシステムがクラッシュしたり、電源が落ちたりした場合に発生します。例えば、データ本体は書き込まれたものの、メタデータ(ファイルの場所を示す情報)の更新が未完了だったとしましょう。この状態では、ファイルシステムはデータ自体は存在しているのに、それがどこにあるのかを見つけられず、「矛盾」が生じてしまいます。この矛盾こそが、ファイルシステムの破損(整合性の喪失)を意味するのです。

ジャーナリングの最大の目的は、この矛盾を防ぎ、クラッシュ後の復旧時間を最小限に抑えることです。

ジャーナリングの動作原理:トランザクション管理

ジャーナリング機能を持つ現代のファイルシステム(ext4, NTFS, XFSなど)は、データ操作を「トランザクション」として扱います。トランザクションとは、一連の操作が「すべて実行されるか、全く実行されないか」のどちらかであることを保証する処理のまとまりです。この考え方、非常に賢い設計だと感じます。

ジャーナリングによる書き込み動作は、主に以下の3つのフェーズで進行します。

  1. ジャーナルへの書き込み(ログ記録):
    まず、ファイルシステムは、これから行う変更操作(「このファイルをここに書き込む」「このメタデータを更新する」など)の意図を、ストレージの特定の領域(ジャーナル領域)にログとして記録します。これは「何をしようとしているか」の宣言であり、システムの意図を明確にする重要なステップです。
  2. 実データとメタデータの書き込み:
    次に、ジャーナルに記録した内容に従って、実際のデータ本体と、それを管理するメタデータをストレージデバイスの所定の場所に書き込みます。
  3. コミット(完了マークの記録):
    すべての書き込みが完了し、システムが整合性を保った状態になった後、ファイルシステムはジャーナル領域に戻り、「このトランザクションは正常に完了しました」という完了マーク(コミットレコード)を記録します。

障害発生時の復旧プロセス

もし、フェーズ2の途中でシステムがクラッシュした場合、再起動後、ファイルシステムはまずジャーナル領域を確認します。完了マーク(コミットレコード)がないトランザクションを見つけたら、それは未完了の操作だと判断されます。ファイルシステムはログに基づいて、操作を最初からやり直す(リプレイ)か、あるいは操作を完全に破棄する(ロールバック)ことで、ファイルシステムを常に一貫性のある状態に戻すことができます。

従来のファイルシステムでは、整合性を確認するために、起動時にディスク全体をチェックするFSCK(ファイルシステムチェック)が必要でしたが、大容量ストレージではこの処理に膨大な時間がかかってしまいました。ジャーナリングは、この復旧作業をジャーナル領域の確認と未完了トランザクションの処理だけに限定するため、ストレージデバイスの論理構造を守る番人として、復旧時間を劇的に短縮してくれるのです。

階層構造との関連性

ジャーナリングは、私たちが指定したデータが、物理的なストレージデバイス(HDD, SSD, NVMe)に書き込まれる過程において、その上位層である「ファイルシステムと論理構造

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

両親の影響を受け、幼少期からロボットやエンジニアリングに親しみ、国公立大学で電気系の修士号を取得。現在はITエンジニアとして、開発から設計まで幅広く活躍している。

目次