スループット (MB/s)
英語表記: Throughput (MB/s)
概要
スループット(MB/s)は、ストレージデバイスが単位時間あたりに転送できるデータ総量をメガバイト毎秒(MB/s)という単位で示した指標です。これは、ストレージデバイス(HDD, SSD, NVMe)のパフォーマンスを評価する上で、最も基本的かつ重要な「指標」の一つです。特に、動画ファイルや大規模なバックアップデータといった、サイズの大きなデータを連続的(シーケンシャル)に読み書きする際の「実効的な速度」を測定するために用いられます。この数値が高いほど、大容量データの処理能力が高いと判断でき、システムのパフォーマンス評価とチューニングにおいて中心的な役割を果たします。
詳細解説
ストレージパフォーマンスにおけるスループットの役割
スループット(MB/s)は、ストレージデバイスの能力を定量的に把握するための重要な手段であり、私たちが定義した「ストレージデバイス(HDD, SSD, NVMe)→ パフォーマンス評価とチューニング → 指標と分析」という文脈の中で、その真価を発揮します。
この指標の目的は、主にシーケンシャルアクセス(連続的なデータの読み書き)の限界速度を知ることにあります。例えば、4K/8K動画の編集作業や、OS全体のイメージバックアップを行う場合など、データが途切れなく大量に流れる状況では、このMB/sの値が作業効率に直結します。ストレージのパフォーマンス評価を行う際、この数値が低いと判明すれば、それはインターフェース(SATA、PCIe)やデバイスそのものがボトルネックになっている可能性を示唆します。
動作原理と測定方法
スループットの測定は、通常、大容量のファイルを連続して読み込み、または書き込み、その完了にかかった時間から平均速度を算出することで行われます。このプロセスは、デバイスの内部構造や接続インターフェースの制約を強く受けます。
- HDDの場合: 物理的なディスクの回転速度やヘッドの移動速度に依存するため、一般的にスループットは数百MB/s程度が限界となります。
- SATA SSDの場合: 接続規格であるSATA 6Gbpsの理論上の限界(約600MB/s)に制約されます。
- NVMe SSDの場合: PCIeレーンを介してCPUに直結するため、SATAの制約を受けず、数千MB/s(例:Gen4では7,000MB/s超)という圧倒的なスループットを実現できます。
このように、ストレージ技術の進化は、まさにこのスループットの向上を目指してきた歴史と言っても過言ではありません。システム管理者がチューニングを行う際、もし高速なNVMeドライブを搭載しているにもかかわらずスループットが低い場合は、PCIeレーンの設定ミスや、CPU、メモリ、あるいはファイルシステム側のオーバーヘッドといった他の要因を疑う「指標」として機能します。
IOPSとの決定的な違い
ストレージのパフォーマンスを語る上で、スループットはしばしばIOPS(I/O Operations Per Second:一秒あたりの入出力処理回数)と比較されます。
- スループット (MB/s): 「一度に運べる荷物の総量」を示し、大容量の連続転送能力を評価します。
- IOPS: 「一秒間に処理できる荷物の数」を示し、ランダムな細かいデータの処理能力(レスポンスの速さ)を評価します。
多くのITシステムにおいて、どちらの指標が重要かは用途によって異なります。例えば、Webサーバーやトランザクション処理を行うデータベースでは、大量の小さなリクエストを迅速に処理するIOPSが重要です。一方、動画編集やデータウェアハウスでの大容量データ分析といった環境では、いかにデータを高速に転送できるか、つまりスループット(MB/s)が決定的に重要になるのです。この適切な「指標」を選択し分析することが、高性能なシステムを構築するための第一歩となります。
具体例・活用シーン
スループット(MB/s)が実際に重要となる具体的なシーンと、初心者にも分かりやすい比喩をご紹介します。この指標は、私たちがストレージの能力を直感的に理解するために非常に役立ちます。
1. 高速道路の比喩(メタファー)
スループット(MB/s)を理解するための最も分かりやすい比喩は、「高速道路の幅(車線の数)」と「トラックのサイズ」です。
- IOPSは、高速道路を走る「車の台数」(一秒間に何台の車が通過するか)に相当します。
- スループット (MB/s)は、「一定時間に通過する荷物の総重量や体積」に相当します。
もし、あなたが引っ越し(大容量データの転送)をする場合、小さな車が何万台通っても、一度に運べる荷物には限界があります。このとき必要なのは、大型のトラック(大容量のデータパケット)がスムーズに、そして大量に通過できる「幅の広い高速道路」(高いMB/s)なのです。NVMeがSATAよりも圧倒的なスループットを誇るのは、SATAが片側一車線の一般道だとすれば、NVMeは複数のレーンを持つ超高速道路だから、とイメージすると非常に分かりやすいでしょう。
2. 活用シーンの例
- 動画制作とレンダリング: 映像クリエイターが数GB、数十GBにもなる高解像度動画ファイルを扱う際、プロジェクトファイルの読み込みや、最終的な動画を書き出す(レンダリング)作業において、スループットが直接作業時間となります。MB/sが低いと、レンダリングに何時間もかかってしまい、効率が著しく低下します。
- 大規模データバックアップ: 企業のサーバーや個人のPCのフルバックアップを行う際、バックアップ先に接続されたストレージのスループットが低いと、バックアップウィンドウ(許容される時間枠)内に作業が終わりません。
- ゲームのロード時間: 最新のPCゲームやコンソールゲームでは、広大なマップデータを読み込むためにストレージのスループット性能が求められます。NVMe SSDの高いMB/sは、ロード時間を劇的に短縮し、ユーザー体験を向上させる決定的な要因となっています。
これらの活用シーンは、いかにスループットが「ストレージデバイスのパフォーマンス評価」において中心的な「指標」であるかを物語っています。
資格試験向けチェックポイント
ITパスポート、基本情報技術者、応用情報技術者などの資格試験では、ストレージの性能指標は頻出テーマです。特に「ストレージデバイス → パフォーマンス評価とチューニング」の文脈で問われるポイントを押さえておきましょう。
| 試験レベル | 重点出題ポイント |
| :— | :— |
| ITパスポート/基本情報 | 定義と単位: スループットが「単位時間あたりのデータ転送量」であり、MB/s(メガバイト毎秒)で表されることを確実に理解してください。また、IOPS(処理回数)との違いを明確に区別することが求められます。 |
| 基本情報/応用情報 | ボトルネックの特定: ストレージのパフォーマンスが低下している場合、原因がスループット(データ転送速度)の低さにあるのか、それともレイテンシやIOPS(ランダムアクセス性能)の低さにあるのかを判断する能力が問われます。スループットはシーケンシャルアクセスに強く関連することを覚えておきましょう。 |
| 応用情報技術者 | 技術的背景とチューニング: NVMeがSATA接続のSSDよりも大幅に高いスループットを実現できる理由(PCIeバスの利用、プロトコルの効率化)を説明できるようにしてください。また、RAID構成(特にRAID 0など)がスループットの向上を目的としたチューニング手法であることを理解しておく必要があります。 |
| 全レベル共通 | 性能指標の選択: データベースやOLTP(オンライントランザクション処理)など、ランダムアクセスが中心の環境ではIOPSを重視し、動画編集や大容量ファイル転送など、シーケンシャルアクセスが中心の環境ではスループット(MB/s)を重視するという、「指標と分析」の選択基準が重要です。|
関連用語
関連用語に関する具体的な指示が入力材料に「情報不足」のため、ここでは一般的なストレージパフォーマンスに関連する用語を挙げ、その情報が不足している旨を明記します。
- IOPS (I/O Operations Per Second)
- レイテンシ (Latency)
- シーケンシャルアクセス (Sequential Access)
- ランダムアクセス (Random Access)
- 情報不足:これらの関連用語について、本記事の文脈(ストレージデバイス → パフォーマンス評価とチューニング)における詳細な定義や、スループットとの具体的な比較情報が入力材料として不足しています。
