netplan(ネットプラン)

netplan(ネットプラン)

netplan(ネットプラン)

英語表記: netplan

概要

netplanは、Linuxサーバーのネットワーク設定を一元的に管理するための比較的新しいユーティリティです。特に、サーバーOS(Linux Server)における複雑になりがちなネットワーク設定を、人間が読みやすいYAML形式の単一ファイルで記述できるように標準化することを目的としています。このツールは、設定のフロントエンド(ユーザーが書く部分)とバックエンド(実際にネットワークを制御する部分)を分離することで、どのLinuxディストリビューションを使っても一貫した設定方法を提供してくれるのが大きな特徴です。

詳細解説

netplanは、私たちが扱う「サーバOS(Linux Server)のネットワーク設定」の分野において、設定管理の煩雑さを解消する非常に重要な役割を担っています。従来のLinux環境では、ディストリビューション(UbuntuやRed Hat系など)や利用するネットワーク管理サービス(NetworkManagerやsystemd-networkdなど)によって設定ファイルの形式や保存場所が異なり、これがサーバー管理者の悩みの種でした。

netplanの目的と背景

netplanの最大の目的は、この設定の多様性を吸収し、標準化されたインターフェースを提供することにあります。サーバー管理者としては、IPアドレスやルーティング、ブリッジなどの設定を行う際、バックエンドで何が動いているか(systemd-networkdなのかNetworkManagerなのか)を気にせず、一貫したYAML形式で記述したいものです。netplanはまさにその願いを叶えてくれます。

これは「Linux サーバ基盤」を運用する上で、非常に大きなメリットです。なぜなら、サーバー環境が異なっても、設定ファイルをコピペして微調整するだけで済むため、環境構築やトラブルシューティングの効率が飛躍的に向上するからです。

主要コンポーネントと動作原理

netplanは主に以下の3つの要素で構成され、動作します。

1. YAML設定ファイル

サーバーの設定は、通常/etc/netplan/ディレクトリ内に保存される.yaml形式のファイルに記述されます。このファイルには、インターフェース名(例:eth0enp0s3)、DHCPを使うか静的IPを使うか、サブネットマスク、ゲートウェイなどの情報が定義されます。YAMLは構造化されたデータ記述言語であり、非常にシンプルで直感的に設定を記述できるのが魅力です。

2. netplanコマンド

サーバー管理者が設定を適用するために使用するのがnetplanコマンドです。
* sudo netplan generate: ユーザーが記述したYAMLファイルを読み込み、バックエンドのレンダラー(後述)が理解できる形式の設定ファイルに「変換(生成)」します。このステップは設定の構文チェックも兼ねており、誤りがあればここで教えてくれるので安心です。
* sudo netplan apply: generateで生成された設定ファイルを実際に読み込ませ、ネットワークサービスに適用して、設定を有効化します。

3. レンダラー(バックエンド)

netplanの心臓部とも言えるのが、このレンダラーです。レンダラーとは、netplanが生成した設定を実際にOSのネットワークスタックに反映させる役割を持つサービスのことです。主なレンダラーには以下の2種類があります。
* systemd-networkd: systemdの一部として動作する、軽量でシンプル、かつサーバー環境で広く使われるレンダラーです。
* NetworkManager: デスクトップ環境やノートPCでよく使われますが、最近ではサーバー環境でも利用されることがあります。複雑なVPN接続やモバイルネットワーク接続などを得意とします。

動作の流れ(設定の「翻訳」作業)

netplanの動作は、まさに「翻訳家」の仕事に似ています。

  1. 設計図の作成: サーバー管理者が、netplanという共通言語(YAML)で「このインターフェースにはこのIPアドレスを割り当てる」というネットワークの設計図を作成します。
  2. 翻訳(Generate): netplan generateコマンドを実行すると、netplanエンジンがこの設計図を読み込みます。そして、「このサーバーはsystemd-networkdを使っているな」と判断し、systemd-networkdが理解できる設定ファイル形式(例:.networkファイル)に正確に翻訳して書き出します。
  3. 実行(Apply): netplan applyコマンドを実行すると、翻訳された設定ファイルがsystemd-networkdに渡され、実際にネットワークインターフェースにIPアドレスが設定され、ルーティングテーブルが更新されます。

このように、管理者はYAMLという統一されたインターフェースだけを扱えば良いため、Linuxサーバーの設定管理が非常にシンプルになり、「ネットワーク設定」の分野における生産性が大きく向上しました。これは、特に多数のサーバーを管理する環境で、管理負荷を劇的に軽減する素晴らしい機能だと感じています。

具体例・活用シーン

netplanは、私たちが日常的に行うLinuxサーバーのネットワーク設定のほぼすべてを担うことができます。

1. 静的IPアドレスの設定

サーバーOS(Linux Server)において、Webサーバーやデータベースサーバーなど、常に同じアドレスでアクセスされる必要のあるマシンには静的IPアドレスを設定します。netplanでは以下のように記述します。

yaml
network:
version: 2
renderer: networkd
ethernets:
enp0s3:
dhcp4: no
addresses: [192.168.1.100/24]
gateway4: 192.168.1.1
nameservers:
addresses: [8.8.8.8, 8.8.4.4]

このYAMLファイルを保存し、sudo netplan applyを実行するだけで設定が完了します。従来の複雑な設定ファイル(例:/etc/network/interfaces)を直接編集するよりも、構造が明確でミスが減るのが実感できます。

2. DHCPによる自動設定

テスト環境や一時的なサーバーでIPアドレスを自動取得させたい場合は、dhcp4: yesと設定するだけで済みます。

yaml
network:
version: 2
renderer: networkd
ethernets:
enp0s3:
dhcp4: yes

3. 初心者向けの比喩:設定の「翻訳家」としてのnetplan

netplanの役割を初めて学ぶ方には、「高級レストランのシェフとウェイターの関係」を想像していただくと分かりやすいかもしれません。

サーバー管理者(お客様)は、自分の希望(「IPアドレス192.168.1.100が欲しい」)を、netplanという共通メニュー(YAMLファイル)に記載します。

netplan(ウェイター兼翻訳家)は、お客様の注文(YAML)を受け取ります。そして、厨房(Linuxカーネル)で実際に調理を担当するシェフ(レンダラー、例:systemd-networkd)が、普段使っている専門的なレシピ(.networkファイル形式)に注文を正確に翻訳します。

ウェイター(netplan)がいるおかげで、お客様(管理者)は厨房のシェフ(レンダラー)が誰であっても、その専門用語やレシピ形式を知る必要がありません。お客様は、ただ「netplanメニュー」に沿って注文すれば、確実にネットワークという料理が提供されるのです。

この「翻訳家」としての機能のおかげで、私たちは「Linux サーバ基盤」のネットワーク設定という、非常に重要なタスクを、より簡単かつ確実に実行できるようになっているのです。

資格試験向けチェックポイント

netplanは比較的新しい技術ですが、現代のLinuxサーバー管理において標準化が進んでいるため、特に「応用情報技術者試験」や、より実務的な知識を問うベンダー資格、あるいは「基本情報技術者試験」でLinuxサーバーの管理に関する問題が出題される場合に、その概念や基本的な操作が問われる可能性があります。

| 試験レベル | 想定される出題パターンと学習のヒント |
| :— | :— |
| ITパスポート | netplanの名称や、ネットワーク設定を簡素化・標準化するツールであるという概要レベルの知識が問われる可能性があります。「Linuxサーバーの設定に使われるツール」として認識しておきましょう。 |
| 基本情報技術者 | netplanが採用している設定ファイルの形式(YAML形式)や、設定を適用するための基本コマンド(netplan apply)の知識が問われることがあります。また、従来のネットワーク設定方法との違い(設定の一元管理)を理解することが重要です。 |
| 応用情報技術者 | サーバーOSの移行や、異なるディストリビューション間での設定互換性に関するシナリオ問題で、netplanの特性が問われる可能性があります。特に、netplanがレンダラー(systemd-networkdやNetworkManager)に依存せず、設定を抽象化する仕組み(フロントエンドとバックエンドの分離)を深く理解しておく必要があります。 |

必須の確認事項

  • 設定ファイルの形式: YAML形式であることを必ず覚えておきましょう。
  • 設定の適用: 設定変更後にネットワークを有効化するコマンドはsudo netplan applyです。
  • netplanの役割: 複数のレンダラー(バックエンド)に対応し、設定を一元管理するための抽象化レイヤーである、という点を押さえておきましょう。これは「Linux サーバ基盤」の安定運用に直結する概念です。

関連用語

  • 情報不足

(関連用語としてsystemd-networkdやNetworkManagerなどを挙げたいところですが、指示に従い「情報不足」と記述します。もしこのセクションを充実させるならば、netplanが利用するレンダラーであるsystemd-networkdや、設定ファイルの形式であるYAML、そしてnetplanが標準採用されているUbuntuなどのディストリビューション名を加えることで、読者の理解が深まるでしょう。)

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この記事を書いた人

両親の影響を受け、幼少期からロボットやエンジニアリングに親しみ、国公立大学で電気系の修士号を取得。現在はITエンジニアとして、開発から設計まで幅広く活躍している。

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