Grafana Loki(グラファナロキ)

Grafana Loki(グラファナロキ)

Grafana Loki(グラファナロキ)

英語表記: Grafana Loki

概要

Grafana Lokiは、クラウドネイティブ環境、特にKubernetesやOpenShiftといったオーケストレーションシステムで発生する膨大なログデータを効率的に収集、保存、検索するために設計された、水平スケーラブルなログ集約システムです。従来のログシステムとは異なり、ログの内容全体ではなく、ログの発生源を示すメタデータ(ラベル)にのみインデックスを付ける「Index Less(インデックスレス)」なアプローチを採用している点が最大の特徴です。これにより、ストレージコストを大幅に削減しつつ、監視とトラブルシューティングに必要な高速なログ検索を実現し、可観測性の向上に貢献します。

詳細解説

Grafana Lokiは、現代の複雑な分散システムにおけるログ管理の課題を解決するために開発されました。オーケストレーション環境では、マイクロサービスアーキテクチャの採用により、数多くのコンテナが動的に生成・破棄され、その結果として天文学的な量のログデータが生成されます。この大量のログを従来の方式で処理しようとすると、インデックス作成とストレージに莫大なコストがかかることが大きな問題でした。

目的と背景:可観測性への貢献

Lokiの主な目的は、コスト効率と検索速度の両立です。可観測性の三本柱である「メトリクス(Metrics)」「ログ(Logs)」「トレース(Traces)」のうち、Lokiは「ログ」を担当します。特に、同じGrafanaエコシステムに属するメトリクス収集ツールであるPrometheusと連携するように設計されており、Prometheusと同じラベルセットを使用してログを管理できるため、メトリクスで異常を検知した際に、その異常に関連するログを迅速に特定できる仕組みが非常に強力です。これは、監視とトラブルシューティングのプロセスをシームレスにつなぐ上で不可欠な機能です。

動作原理:Index Lessの魔法

Lokiの革新性は、その「Index Less」な動作原理にあります。

  1. ラベルベースのインデックス作成: Lokiは、ログの内容そのものにはインデックスを付けません。代わりに、ログを生成したPod名、Namespace、アプリケーション名、環境などのメタデータ(ラベル)にのみインデックスを付けます。
  2. ログストリームの生成: 同じラベルセットを持つログは「ストリーム」としてまとめられ、時系列順に圧縮・保存されます。
  3. LogQLによる検索: 検索時には、まず利用者が必要なラベル(例:「サービスA」の「本番環境」のログ)を指定します。Lokiはこのラベルインデックスを使って該当するログストリーム群を一気に絞り込みます。
  4. 時系列検索: 絞り込まれたストリーム群に対してのみ、指定された時間範囲や正規表現によるテキスト検索を実行します。

このアプローチにより、従来のシステムのようにすべてのログワードに対してインデックスを構築する必要がなくなるため、インデックスのサイズが劇的に小さくなり、ストレージコストと処理負荷が大幅に軽減されます。オーケストレーション環境におけるコスト効率の高い運用を可能にする、非常に賢い設計だと感じます。

主要コンポーネント

Lokiは分散システムとして機能し、以下の主要コンポーネントで構成されています。

| コンポーネント | 役割 |
| :— | :— |
| Promtail(エージェント) | 各ノードで動作し、コンテナの標準出力などからログを収集します。Prometheusと同じ形式のラベルを付与し、LokiのDistributorへ送信します。Kubernetes環境ではDaemonSetとしてデプロイされるのが一般的です。 |
| Distributor | Promtailからログを受け取り、ログの検証やレート制限を行い、負荷分散のために複数のIngesterにログを分散します。システムの入口ゲートの役割を果たします。 |
| Ingester | 受信したログをメモリ内に保持し、圧縮処理(チャンク化)を行います。一定期間が経過するか、チャンクが満杯になると、永続ストレージ(Amazon S3、Google Cloud Storageなど)へ書き込みます。 |
| Querier | ユーザーからの検索クエリ(LogQL)を受け取ります。まずIngesterに問い合わせて最新のログを取得し、次に永続ストレージから古いログを読み出して結合・処理し、結果を返します。 |

これらのコンポーネントが連携することで、オーケストレーション環境の動的な変化にも対応できる、高いスケーラビリティと耐障害性を実現しています。

具体例・活用シーン

1. 監視・トラブルシューティングの連携

オーケストレーション環境で最も一般的な活用シーンは、Grafana、Prometheus、Lokiを組み合わせた「GrafaStack」と呼ばれる構成です。

  1. 異常検知: Grafanaのダッシュボードで、Prometheusから収集されたメトリクス(例:特定サービスのCPU使用率の急増)を見て、システムに異常が発生していることを確認します。
  2. コンテキストの取得: 異常を示しているグラフ上の特定の時間帯とサービス名(ラベル)をクリックします。
  3. ログへのドリルダウン: Grafanaの機能により、Prometheusと同じラベルと時間帯を持つLokiのログ検索画面に自動的に遷移します。
  4. 原因特定: Loki上でLogQLを使用して、該当するサービスがその時間帯に吐き出したエラーメッセージやスタックトレースを検索し、具体的な原因(例:データベース接続エラー)を迅速に特定します。

このように、メトリクスとログが共通のラベルで結びついているため、監視とトラブルシューティングの間の壁がなくなり、運用担当者(SREやDevOpsエンジニア)は非常にスムーズに問題解決に取り組めます。

2. 図書館の目録システムとしての比喩

Grafana Lokiの「Index Less」な仕組みを理解するために、大規模な図書館のシステムを想像してみましょう。

従来のログシステムは、図書館にあるすべての本の全ページの内容をスキャンし、すべての単語(ログのテキスト)に詳細な索引(インデックス)を付けるようなものです。例えば、「猫」という単語を検索すれば、どの本の何ページ目に「猫」が出てくるか即座に分かります。これは非常に強力ですが、索引を作る作業(計算資源)と、索引を保管する場所(ストレージ)が膨大になります。

一方、Grafana Lokiは、本のタイトル、著者、ジャンル、発行年(ラベル)にだけ索引を付けます。

あなたが「2023年に発行された、IT技術に関する本」を探しているとします。
Lokiのシステムでは、まず索引(ラベル)を使って「発行年:2023年」「ジャンル:IT技術」という条件を満たす本棚(ログストリーム)を特定します。その本棚が特定されたら、あとはその本棚の中身だけを、手作業でパラパラと確認(テキスト検索)すれば良いのです。

Lokiは、まず「どこを探すべきか(ラベル)」を特定し、その範囲内で「何が書いてあるか(テキスト)」を検索します。この効率的な二段階アプローチのおかげで、オーケストレーション環境で日々積み上がる大量のログに対しても、圧倒的なコスト効率と実用的な検索速度を提供できるのです。これは本当に画期的なアイデアだと感心します。

資格試験向けチェックポイント

Grafana Loki自体が直接的にITパスポートや基本情報技術者試験で出題される可能性は低いですが、応用情報技術者試験や、SRE/DevOpsの知識が問われる高度情報処理試験においては、その概念や背景知識が重要になってきます。特に、監視とトラブルシューティング、そして可観測性の文脈で理解しておくべきポイントは以下の通りです。

  • 可観測性の三本柱: Lokiは「ログ」を担当し、Prometheus(メトリクス)やJaeger(トレース)などと連携して、分散システムの可観測性を実現するツール群の一部である、という認識が必要です。
  • Index Lessの概念: ログの内容全体ではなく、「ラベル」と呼ばれるメタデータにインデックスを付けることで、ストレージコストと検索効率を両立させている点を理解しておきましょう。この特性は、大量のデータ(ビッグデータ)を扱う際のコスト最適化戦略として重要です。
  • LogQLの役割: Prometheusのクエリ言語(PromQL)から派生したLogQLを使用し、ラベルベースでログストリームを絞り込む検索手法を採用している点。これは、コンテナオーケストレーション環境における運用知識として重要です。
  • クラウドネイティブとの関連: Kubernetesやマイクロサービスといったオーケストレーション技術の普及に伴い、ログ管理の複雑性が増した結果、Lokiのような専用のログ集約システムが求められているという背景を理解しておくことが、応用的な知識として役立ちます。

監視とトラブルシューティングの文脈では、Lokiが提供する高速なログ検索機能が、平均修復時間(MTTR: Mean Time To Recovery)の短縮に直結するという点が、運用上のメリットとして問われる可能性があります。

関連用語

  • 情報不足(関連用語の情報不足)
  • Prometheus(プロメテウス): メトリクス収集システム。Lokiとセットで利用されることが多いです。
  • Grafana(グラファナ): データ可視化ツール。LokiやPrometheusのデータを統合してダッシュボードを作成します。
  • 可観測性(Observability): システムの内部状態を外部から推測できる能力。メトリクス、ログ、トレースの三要素で構成されます。
  • Kubernetes: コンテナオーケストレーションのデファクトスタンダード。Lokiが最も活用される環境です。
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この記事を書いた人

両親の影響を受け、幼少期からロボットやエンジニアリングに親しみ、国公立大学で電気系の修士号を取得。現在はITエンジニアとして、開発から設計まで幅広く活躍している。

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