PCI(ピーシーアイ)

PCI(ピーシーアイ)

PCI(ピーシーアイ)

英語表記: PCI (Peripheral Component Interconnect)

概要

PCI(ピーシーアイ)は、「コンピュータの構成要素」を構成する非常に重要な「バス構造」の中でも、1990年代後半から2000年代初頭にかけてPCの標準的な「バス規格」として広く普及したインターフェース規格です。これは、CPUと、グラフィックボードやネットワークカードといった様々な周辺機器(拡張カード)との間で、データを高速かつ効率的にやり取りするために開発されました。従来の規格(ISAバスなど)の速度や使い勝手の問題を解決し、特にPlug and Play(プラグアンドプレイ)機能を標準搭載することで、コンピュータの拡張性を飛躍的に向上させた画期的な技術です。

詳細解説

PCIは、コンピュータの進化の歴史において、まさに高性能化と利便性の両立を実現したバス規格だと私は考えています。この規格がどのように「バス構造」を進化させたのかを詳しく見ていきましょう。

1. 開発の経緯と目的

PCIが登場した背景には、PCの心臓部であるCPUの処理速度が飛躍的に向上した一方で、周辺機器を接続するバス(データ伝送路)の速度が追いつかなくなったという事情があります。それまでの主流だったISAバスは、転送速度が遅いだけでなく、新しい拡張カードを接続するたびに、ユーザーが手動でIRQ(割り込み要求)やI/Oアドレスといったリソースを複雑に設定する必要がありました。

PCIの最大の目的は、このボトルネックを解消し、高速なデータ転送を実現するとともに、ユーザーの手間を省くことでした。これにより、高性能なグラフィック処理や高速なネットワーク通信が可能となり、「コンピュータの構成要素」全体のバランスが取れるようになったのです。

2. バス構造と動作原理

PCIは、CPUとメモリから独立した「拡張バス」として機能します。

  • 並列転送方式の採用: PCIは、複数のデータビットを同時に送る「並列転送」方式を採用しています。標準的な仕様では、33MHzまたは66MHzのクロック周波数で動作し、32ビットまたは64ビットのバス幅を持ちました。これにより、従来のISAバスに比べて理論上の最大転送速度が劇的に向上しました。これは、「バス規格と進化」の文脈において、データバスの物理的な性能を向上させた代表例です。
  • ブリッジチップの役割: PCIバスは、マザーボード上のチップセット(特にノースブリッジやサウスブリッジ)を介してCPUやメモリと接続されます。このチップセット内のPCIブリッジが、CPU側の高速なシステムバスとPCIバスの間でデータの橋渡しを行い、異なる速度やプロトコルを調整する重要な役割を担っていました。
  • Plug and Play (PnP) 機能: PCIが広く受け入れられた最大の要因の一つが、PnPの標準搭載です。この機能により、拡張カードを物理的にスロットに差し込むだけで、OS(オペレーティングシステム)が自動的にそのカードに必要なシステムリソース(IRQ、メモリ空間など)を検出し、割り当ててくれます。これにより、かつてIT技術者でさえ頭を悩ませていた設定作業が不要になり、一般ユーザーでも簡単にPCを拡張できるようになりました。これは、バス規格の進化が、PCの「使いやすさ」という側面にも大きく貢献したことを示しています。

3. バス規格の進化の中での位置づけ

PCIは、ISAバスからの世代交代を成功させましたが、さらに高性能なグラフィックボードの要求には応えきれなくなり、グラフィック専用の高速バスであるAGPへと一部の役割を譲ります。そして、最終的には並列転送の限界や共有バス構造の制約を克服するために開発された、シリアル転送方式のPCI Express(PCIe)へとその座を明け渡しました。PCIは、並列バスの完成形として、その後のシリアルバス時代への道筋をつけた、歴史上非常に重要な「バス規格」だったと言えます。

具体例・活用シーン

PCIバスは、私たちが日常的に使用していたPCの拡張性を支える土台でした。

1. 拡張カードによる機能追加

かつて、PCに新しい機能を追加する際は、必ずPCIスロットを利用していました。

  • 高性能グラフィックボード(初期): AGPが登場する前、あるいはAGP非搭載のシステムでは、高速な描画を行うためのグラフィックボードがPCIスロットに接続されていました。
  • SCSIインターフェースカード: 大容量ストレージや高速な周辺機器を接続するために、PCI接続のSCSIカードが利用されていました。
  • モデムカード・ISDNカード: インターネット黎明期には、通信を行うためのモデムやISDNアダプタがPCIカードとしてPCに組み込まれていました。

2. 複数のバス停を持つ高速道路の比喩

「コンピュータの構成要素」におけるPCIバスの役割を理解するために、PCIバスを「複数のバス停を持つ高速道路」としてイメージしてみましょう。

CPUは、膨大なデータ(乗客)を目的地(周辺機器)に届けたいと考えています。PCIバスは、データを高速で運ぶための高速道路です。この高速道路は、一度に多くの車線(並列データ線)を使ってデータを運ぶことができます。

この高速道路には、いくつかの「バス停」(拡張スロット)が設けられています。拡張カードは、このバス停に停車するバスのようなものです。PCIバスの仕組みは、これらのバスが同じ高速道路を共有し、順番に、または決められたルールに従ってデータをやり取りすることを可能にしました。

特にPnP機能は、新しいバス停を設置した際に、管理センター(OS)が自動的にそのバス停の場所や経路をシステムに登録し、運行スケジュール(リソース)を割り当ててくれるようなものです。これにより、人間が手動で時刻表(IRQ)を設定する煩わしさから解放され、拡張が非常に簡単になったというわけです。

資格試験向けチェックポイント

ITパスポート試験や基本情報技術者試験、応用情報技術者試験では、「バス規格と進化」の歴史を理解しているかが問われます。

  • ISAからの改善点: PCIがISAバスの欠点(低速性、手動設定の必要性)を克服し、高速化とPlug and Playを実現した点が最も重要です。この歴史的経緯を必ず押さえてください。
  • PnP(プラグアンドプレイ)機能: PCIの代名詞とも言える機能であり、リソースの自動設定を可能にした技術であることを認識しましょう。ユーザビリティの向上という観点からも重要です。
  • 転送方式の理解: PCIは「並列転送」方式の代表格です。後継のPCI Expressが「シリアル転送」であることとの対比で、それぞれの特徴や限界が問われることがあります。
  • バスの分類: PCIが「拡張バス」であり、CPUと周辺機器間の通信を担う役割を、図や構成要素の名称と共に理解しておくことが得点に繋
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この記事を書いた人

両親の影響を受け、幼少期からロボットやエンジニアリングに親しみ、国公立大学で電気系の修士号を取得。現在はITエンジニアとして、開発から設計まで幅広く活躍している。

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