ブロックストレージ
英語表記: Block Storage
概要
ブロックストレージは、データを固定サイズの「ブロック」という最小単位に分割し、それぞれに一意のアドレスを割り当てて管理する、最も基本的なストレージ提供方式の一つです。これは、特にクラウド環境において、仮想サーバー(VM)がOSやアプリケーションを格納するための「仮想的なハードディスク」として機能するために使用されます。ネットワーク経由で接続されるにもかかわらず、ユーザーやアプリケーションからはローカルディスクのように扱えるのが大きな特徴です。
この仕組みは、私たちが普段利用している物理的なストレージデバイス(HDDやSSD)のデータ記録方法を、そのまま仮想化し、高速なストレージ接続ネットワークを介して提供するものだと理解してください。
詳細解説
ブロックストレージが「ストレージデバイス(HDD, SSD, NVMe)→ ストレージ接続とネットワーク → クラウドストレージ」という文脈でなぜ重要なのかを深掘りしてみましょう。
1. 物理デバイスの抽象化と仮想化
従来のオンプレミス環境では、サーバーとストレージデバイス(HDD/SSD)は物理的に直結していました。しかし、クラウド環境では、大量の物理ストレージデバイスが集合した「ストレージプール」が構築され、そこから必要な容量だけを切り出して、仮想マシン(VM)に割り当てます。この切り出された領域を「ボリューム」と呼びます。
ブロックストレージは、このボリュームをVMに提供する仕組みです。VMは、このボリュームをあたかも自分の筐体内に組み込まれた高性能なSSDであるかのように認識します。この抽象化こそが、クラウドストレージの柔軟性の基盤なのです。
2. ストレージ接続とネットワークの役割
ブロックストレージの性能を左右するのは、「ストレージ接続とネットワーク」の層です。VMとストレージプール間のデータのやり取りは、高速かつ低遅延のネットワーク(内部的にはSANやiSCSI、Fibre Channelの技術をベースにした仕組みが多いですが、クラウドベンダーがこれを完全に抽象化しています)を介して行われます。
なぜ低遅延が必須なのでしょうか?それは、ブロックストレージがOSの起動やデータベースのトランザクションなど、ランダムアクセスが多く、一瞬の遅延も許されない用途に使われるからです。もしネットワークが遅ければ、VMのOSがフリーズしたり、データベースの処理速度が極端に落ちたりしてしまいます。ブロックストレージは、このネットワーク接続を駆使することで、物理デバイスに匹敵するか、場合によってはそれ以上の性能を仮想的に実現しているわけです。
3. データ管理とI/O性能
ブロックストレージでは、データはファイルシステムを持たない生(Raw)のブロックとして扱われます。VMにボリュームが接続された後、ユーザー(またはOS)がそのボリューム内に初めてファイルシステム(例:NTFS, ext4など)を構築します。これにより、OSがディスクを完全に制御できるため、非常に細かく、効率的なI/O(Input/Output)操作が可能となります。
これが、ウェブサイトの画像ファイルなどを保存するオブジェクトストレージ(ファイル全体を一つの塊として扱う)との大きな違いです。ブロックストレージは、データのどの部分を読み書きするかをブロックアドレス指定で直接行うため、データベースのように頻繁に小さなデータの書き換えが必要なワークロードに最適です。
4. 永続性(Persistence)
クラウドストレージの文脈で非常に重要なのが「永続性」です。ブロックストレージのボリュームは、それを利用している仮想マシンとは独立して存在します。もしVMを停止または削除しても、データボリュームを切り離して保持しておけば、データはそのまま残ります。これにより、VMを新しい世代のものに交換したり、障害が発生した際にボリュームを別のVMに付け替えたりといった、柔軟な運用が可能になります。これは、クラウド環境における可用性と耐久性を高めるための鍵となる仕組みですね。
(現在の文字数:約1,900文字)
具体例・活用シーン
ブロックストレージは、クラウドインフラストラクチャの土台を支える、非常に身近な技術です。
比喩(貸金庫のメタファー)
ブロックストレージを理解する上で、貸金庫の比喩は非常に役立ちます。
オブジェクトストレージが「整理され、中身がラベル付けされた完成品(本)」だとすれば、ブロックストレージは「中が空っぽの、鍵付きの貸金庫」に相当します。この貸金庫(ボリューム)は、銀行(クラウドプロバイダー)の金庫室(ストレージプール)に安全に保管されています。
ユーザー(仮想マシン)は、この貸金庫をネットワーク経由で借り受け、初めてその中で自分自身の整理整頓のルール(ファイルシステムやOS)を設定します。この貸金庫は他の誰とも共有されず、ユーザー専用の、高速な読み書きが可能な領域として機能します。ユーザーが貸金庫を返却しても、中身(データ)はそのまま金庫室に残り、必要に応じて別のユーザー(別のVM)がアクセスできるようになる、というイメージです。
活用シーン
- 仮想サーバーのOSとシステム領域: クラウド上のVMを起動する際、OSをインストールし、システムファイルを実行する場所としてブロックストレージ(例:AWSのEBS、Azure Diskなど)が必須です。これがなければ、VMは起動できません。
- 高性能データベースシステム: 頻繁なトランザクション処理やランダムアクセスが必要なMySQLやPostgreSQLなどのデータベースサーバーのデータ格納領域として利用されます。高速なI/O性能が求められるため、高性能なSSDベースのブロックストレージが選ばれます。
- 永続的なデータ保管: VMを停止・再起動してもデータを保持したい場合に、VMのルートボリュームとは別にデータボリュームとして接続されます。この永続性により、重要な業務データが保護されます。
- ブートボリュームとデータボリュームの分離: VMのOSが入っているブートボリュームと、アプリケーションデータが入っているデータボリュームを分離することで、OSの入れ替えやバックアップを容易に行えるようになります。
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資格試験向けチェックポイント
IT Passport、基本情報技術者、応用情報技術者試験において、ブロックストレージはクラウド技術やストレージ技術の基礎として頻出します。特に、他のストレージタイプとの比較が重要になります。
- 永続性と独立性: ブロックストレージのボリュームは、仮想マシン(VM)とは独立して存在し、VMが停止または削除されてもデータが保持される「永続性」を持つ点を必ず押さえてください。
- ファイルシステムの要件: ブロックストレージは、接続された後、利用側(OS)でファイルシステムを構築する必要がある、という点が大きな特徴です。オブジェクトストレージやファイルストレージでは、この構築作業は不要です。
- 用途の区別: OSの起動ディスクやデータベースなど、高いI/O性能とランダムアクセスが必要な用途に最適であることを理解しましょう。
- クラウドサービス名との紐づけ: AWSのEBS(Elastic Block Store)、Azure Disk Storageなど、主要なクラウドプロバイダーにおける具体的なサービス名と結びつけて学習すると、応用力がつきます。
- ストレージ接続の原理: ブロックストレージは、物理的なHDD/SSDのアクセス方式を、高速なネットワーク(SANの概念)を通じて仮想化したものである、という背景知識が問われることがあります。つまり、「ストレージ接続とネットワーク」の層が性能の鍵を握っていることを理解しておきましょう。
関連用語
- オブジェクトストレージ (Object Storage)
- ファイルストレージ (File Storage)
- 仮想マシン (VM)
- ストレージエリアネットワーク (SAN)
- ボリューム (Volume)
関連用語の情報不足:
本記事では、ブロックストレージの基本的な概念とクラウドにおける役割を中心に解説しました。関連用語として挙げた「オブジェクトストレージ」や「ファイルストレージ」との具体的な比較(例:APIの違い、スケーラビリティの違い)について、詳細な情報が不足しています。これらの比較情報を加えることで、ブロックストレージの特性がより明確になります。また、ブロックストレージの基盤となる技術(iSCSIやファイバーチャネル)についての具体的な説明も不足しています。
(総文字数:約3,150文字)
