CMOS(CMOS: シーモス)

CMOS(CMOS: シーモス)

CMOS(CMOS: シーモス)

英語表記: CMOS (Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)

概要

CMOSとは、コンピュータのシステム設定を保持するために使われる特殊な半導体技術(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)を用いたメモリチップのことです。このメモリは非常に消費電力が低いため、マザーボード上の小型バッテリー(CMOSバッテリー)からの電力で、PCの電源が切られていても内部のデータを維持し続けます。特に、PCが起動する際に最初に動作するファームウェア(BIOS/UEFI)が参照する、システム時刻や起動デバイスの順序といった重要な情報を保存する役割を担っています。CMOSメモリは、PCがOS(ソフトウェア)を起動し、ハードウェアを適切に利用するための初期設定を担う「設定と保存領域」として不可欠な存在です。

詳細解説

CMOSは、タキソノミの文脈「ハードウェアとソフトウェアの関係 → ファームウェアとBIOS/UEFI → 設定と保存領域」において、まさにその中心的な役割を担っています。

1. 設定を保持する目的

コンピュータが起動する際、OS(ソフトウェア)が立ち上がる前に、マザーボード上に組み込まれたファームウェア(BIOSやUEFI)が動作し、CPU、メモリ、ストレージなどのハードウェアの初期化とチェックを行います。この初期化プロセスを実行するためには、「どのストレージからOSを読み込むべきか」「現在のシステム時刻は何か」「CPUの動作設定はどうなっているか」といった、ユーザーが設定した情報が必要です。

これらの設定情報を永続的に保持し、ファームウェアがいつでも参照できるように提供する場所こそがCMOSメモリです。もしCMOSがなければ、PCを起動するたびにすべての設定をやり直さなければならないことになり、非常に不便ですよね。

2. CMOS技術の特性と動作原理

CMOS(相補型金属酸化膜半導体)という名称は、その製造技術に由来しています。この技術の最大の特徴は、その「超低消費電力性」にあります。CMOS技術は、従来の半導体技術(TTLなど)と比較して、回路が動作していない待機状態における電力消費が極めて低いのです。

この特性のおかげで、マザーボード上の小さなボタン電池(通常はリチウム電池であるCR2032型)一つで、数年間にわたってCMOSメモリへの電力供給を維持することが可能になります。PC本体の電源がオフになっていても、このバッテリーからの電力供給が続く限り、CMOSメモリ内の設定データ(揮発性メモリでありながら、実質的に不揮発性のように振る舞う)と、リアルタイムクロック(RTC)が刻む時刻情報が保持されます。

CMOSメモリ自体はSRAM(Static RAM)の一種として機能することが多く、高速ですが、電源供給が途絶えるとデータを失う「揮発性」の性質を持っています。しかし、バッテリーによる補助電源があるため、ユーザー体験上は設定が消えることはありません。

3. ファームウェアとの連携

CMOSに保存された設定は、ファームウェア(BIOS/UEFI)が利用するために存在します。

  1. 設定の変更: ユーザーがPC起動時に特定のキー(例: Delete, F2)を押してファームウェアの設定画面に入り、起動順序や日付時刻を変更します。
  2. CMOSへの書き込み: 変更された設定情報は、ファームウェアによってCMOSメモリに書き込まれます。
  3. 起動時の読み込み: 次回PCが起動する際、ファームウェアはCMOSメモリから最新の設定を読み出し、それに基づいてハードウェアを初期化します。

この連携により、ユーザーの意図(ソフトウェア的な設定)がハードウェアの動作(ハードウェアとソフトウェアの関係)に反映されるという、現代のPCの基本的な起動プロセスが実現されています。もしCMOSバッテリーが切れてしまうと、設定が工場出荷時の状態に戻ってしまうだけでなく、システム時刻がリセットされ、PCが正常に起動できなくなるリスクもあるため、この「保存領域」の維持は非常に重要です。

具体例・活用シーン

1. 起動デバイスの指定

最も一般的なCMOS設定の利用例は、「起動デバイスの順序(ブートオーダー)」の変更です。

  • シーン: 新しいOSをインストールするために、DVDドライブやUSBメモリからPCを起動したい場合。
  • CMOSの役割: ユーザーはBIOS/UEFI設定画面に入り、CMOSに保存されている「起動順序」の設定を、内蔵HDD/SSDよりもUSBメモリや光学ドライブを優先するように変更し、保存します。ファームウェアは、次回起動時にCMOSからこの設定を読み込み、指定されたデバイスからOSの読み込みを試みます。

2. PCの「秘書のメモ」としてのCMOS

CMOSの役割を理解するための比喩として、CMOSをPCの「秘書のメモ」だと考えると分かりやすいです。

PCの電源を切って家に帰る状況を想像してください。PC本体(会社)は一旦すべての活動を停止します。しかし、重要な秘書(ファームウェア/BIOS)が、翌朝の準備を忘れないようにメモ(CMOS)を残します。

  • メモの内容: 「明日は9時に起動すること」「一番最初に確認すべき書類(起動デバイス)はこれ」「現在の正確な時刻はこれ」
  • CMOSバッテリー: これは、秘書がメモを書き残すための小さなデスクライトの電力です。会社全体の電気が消えても、このデスクライトはついているので、メモはいつでも参照可能です。

もしこのデスクライト(CMOSバッテリー)が切れてしまったら、秘書は翌朝、すべての情報を忘れてしまい、時計も初期設定に戻ってしまいます。PCが設定を忘れてしまうのは、この「秘書のメモ」の電力が切れてしまった状態なのです。

3. ハードウェア情報の保存

CMOSは、単なる時刻やブート順序だけでなく、接続されているフロッピーディスクドライブ(過去のPC)や、特定の拡張カードの割り込み設定(IRQ)といった、当時のハードウェア構成に関する情報も保存していました。現代のUEFIベースのPCでは、より高度な方法で設定が保存されていますが、基本的な「設定と保存領域」としての役割はCMOSが担ってきた歴史的な流れを受け継いでいます。

資格試験向けチェックポイント

CMOSに関する知識は、特にITパスポート試験や基本情報技術者試験において、コンピュータの基礎知識として出題されやすい分野です。

  • 揮発性と不揮発性に関する知識の整理
    • CMOSメモリ自体は、電源供給がなければデータを失う「揮発性メモリ」の一種です。(SRAMが使われることが多いです。)
    • しかし、マザーボード上のバッテリーによって常に電力が供給されるため、実質的には設定を保持し続ける「不揮発性」として機能します。この「バッテリーによる補助電源」の役割を問う問題が頻出します。
  • CMOSバッテリーの役割
    • CMOSバッテリー(ボタン電池)は、システムクロック(RTC)の動作と、CMOSメモリ内の設定データの保持に使われることを理解しておきましょう。
    • バッテリーが消耗すると、システム時刻が狂ったり、BIOS設定が初期化されたりする現象と結びつけて出題されます。
  • ファームウェアとの関係
    • CMOSは、OSが起動する前の段階で動作する「ファームウェア(BIOS/UEFI)」が参照する設定情報を格納する場所である、という文脈をしっかり押さえてください。CMOS設定の変更は、OS上ではなく、ファームウェアの設定画面で行う、という流れが重要です。
  • タキソノミの理解
    • CMOSが「ハードウェアとソフトウェアの関係」を円滑にするための「設定と保存領域」であることを理解しているか、という応用的な問いにも対応できるように準備しておきましょう。

関連用語

  • 情報不足

(解説に必要な関連用語、例えば「BIOS」「UEFI」「RTC(リアルタイムクロック)」「NVRAM」などの情報が提供されていません。これらの用語はCMOSと密接に関連しており、特に現代のPCにおける設定情報の保存方法を理解するためには不可欠です。)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

両親の影響を受け、幼少期からロボットやエンジニアリングに親しみ、国公立大学で電気系の修士号を取得。現在はITエンジニアとして、開発から設計まで幅広く活躍している。

目次