CSI ドライバ(シーエスアイドライバー)
英語表記: CSI Driver
概要
CSIドライバ(Container Storage Interface Driver)は、コンテナオーケストレーションシステムであるKubernetesが、外部の多様なストレージシステムと連携するための標準化されたインターフェースを提供する仕組みです。これにより、ユーザーは特定のクラウドベンダーやオンプレミス環境に依存することなく、統一された方法で永続ボリューム(Persistent Volumes: PV)を動的にプロビジョニングし、コンテナアプリケーションに利用させることができます。Kubernetesの「機能」を外部ストレージという「構成」要素を通じて拡張し、さらにそのアクセスに必要な「シークレット管理」を仲介する、非常に重要な役割を担っています。
詳細解説
CSIドライバは、Kubernetesの柔軟性と拡張性を飛躍的に高めるために導入されました。もともと、Kubernetesには様々なストレージプロバイダー向けのコードが本体(インツリー)に組み込まれていましたが、この方式では、ストレージベンダーが新機能をリリースしても、Kubernetes本体のリリースサイクルを待たなければならず、開発と運用の速度が合いませんでした。そこで、ストレージのロジックをKubernetes本体から分離し、外部(アウトオブツリー)で独立して開発・運用できるようにするために、CSIという標準仕様が策定されました。
CSIの動作原理と主要コンポーネント
CSIドライバは、主に以下の3つのサービスコンポーネントから構成され、Kubernetesクラスタ内でPodとして動作します。
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Controller Service(コントローラーサービス):
クラスタ全体を管理する役割を持ちます。ユーザーがPersistentVolumeClaim (PVC) を作成すると、このサービスが外部ストレージシステムと通信し、必要なストレージリソース(例えば、AWS EBSボリュームやAzure Disk)を実際に作成(プロビジョニング)したり、削除したりします。これは、Kubernetesの「構成」であるStorageClassの定義に基づいて動作します。 -
Node Service(ノードサービス):
各ワーカーノード上で動作し、Podがストレージを利用する際に必要な、実際のボリュームのマウント(接続)やアンマウント(切断)の処理を担当します。データパスの確保という重要な役割を担っています。 -
Identity Service(アイデンティティサービス):
ドライバ自身の情報(バージョンや機能)をKubernetesに提供し、ドライバの健全性を報告します。
「構成/シークレット管理」との密接な関連
なぜCSIドライバが「構成/シークレット管理」のカテゴリに入るのでしょうか。それは、CSIドライバが外部ストレージと通信する際に、Kubernetesの構成要素とシークレット管理機能に深く依存しているからです。
まず、「構成」の側面です。CSIドライバの振る舞いは、StorageClass(ストレージクラス)というKubernetesのAPIオブジェクトによって細かく定義されます。StorageClassは、どのCSIドライバを使用するか、ボリュームのタイプ、レプリケーション設定、課金モデルなど、ストレージの「構成」を決定づける設計図です。ユーザーは、この構成を定義することで、アプリケーションが必要とするストレージの品質(QoS)を指定できます。
次に、「シークレット管理」の側面です。多くの外部ストレージシステム(特にクラウドAPIやオンプレミスの認証を必要とするストレージ)に接続し、プロビジョニング操作を行うためには、認証情報(APIキー、アクセスキー、パスワードなど)が必要です。CSIドライバは、これらの機密情報をKubernetesのシークレットオブジェクトとして安全に保存し、動作時にそれを利用します。ドライバがシークレットにアクセスできなければ、外部ストレージを操作することは不可能です。したがって、CSIドライバは、Kubernetesのシークレット管理機能を活用し、ストレージ操作のセキュリティを確保する、構成管理の実行エンジンとしての役割を果たしているのです。
この分離された設計思想のおかげで、Kubernetesのストレージ機能は、構成の変更や新しいストレージ技術の導入に対して、非常に高い柔軟性を保つことができています。これは、現代の複雑なマルチクラウド環境において、極めて大きなメリットと言えるでしょう。
具体例・活用シーン
CSIドライバの存在によって、Kubernetesは真にステートフル(永続的なデータを持つ)なアプリケーションを運用できるようになりました。
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クラウドデータベースの永続化:
AWS、Azure、GCPなどのクラウド環境でデータベース(例:PostgreSQL, MySQL)をKubernetes上で動かす際、CSIドライバは、対応するクラウドのブロックストレージ(EBS、Azure Diskなど)を動的に作成し、データベースPodに接続します。もしPodが予期せずダウンしても、データは永続ボリュームに残っているため、新しいPodが起動した際にデータが引き継がれます。 -
ハイブリッド環境でのデータ連携:
オンプレミス環境で利用している高性能なSAN (Storage Area Network) やNAS (Network Attached Storage) をKubernetesクラスタで利用したい場合、そのストレージベンダーが提供するCSIドライバをインストールするだけで、Kubernetesの標準的なPV/PVCの仕組みを通じて、そのストレージリソースをコンテナに割り当てることができます。
万能変換アダプターとしてのCSIドライバ
CSIドライバの役割を初心者の方に理解していただくために、身近な例で考えてみましょう。CSIドライバは、海外旅行に持っていく「万能変換アダプター」のようなものだとイメージしてください。
Kubernetesクラスタ(旅行者)は、アプリケーション(家電)を動かすために「電源」(ストレージ)を必要としています。しかし、世界中には様々な種類の電源コンセント(AWS、GCP、オンプレミスのストレージなど)が存在し、形状も電圧もバラバラです。Kubernetes本体は、これらの多様なコンセントに直接対応することはできません。
ここでCSIドライバ(万能変換アダプター)の出番です。
- 標準化されたインターフェース: CSIドライバは、Kubernetesに対しては常に統一されたプラグ形状(標準インターフェース)を提供します。
- ベンダー固有の対応: ドライバの内部では、接続先の国(ベンダー)に合わせて、プラグの形状を変換したり、電圧を調整したり(プロビジョニングの実行)します。
- シークレット管理: さらに、このアダプターは、特定の国(ストレージ)に接続するための「パスポート」や「ビザ」(APIキーなどのシークレット)を安全に保管し、接続時にのみ使用します。
このアダプターがあるおかげで、Kubernetesは「どこのストレージを使うか」を意識することなく、標準的な手順(PVCの作成=プラグを差し込む)だけで、必要な永続ストレージを確実に手に入れることができるのです。これは、Kubernetesの構成管理を非常にシンプルかつ強力にする、驚くべき仕組みだと思います。
資格試験向けチェックポイント
CSIドライバは、Kubernetesの高度な運用や設計に関する知識を問う試験(例:応用情報技術者試験の一部、特定のベンダー資格など)で頻出するテーマです。特に、その背景と役割は重要です。
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インツリーからの移行:
CSIが導入された最大の理由は何ですか? → 答えは、ストレージロジックをKubernetes本体(インツリー)から分離し、ストレージベンダーが独立して開発(アウトオブツリー)できるようにすることで、機能拡張のスピードとクラスタの安定性を高めるため、です。この背景知識は非常に重要です。 -
動的プロビジョニングの実現:
CSIドライバの主要な役割は、PersistentVolumeClaim (PVC) の要求に基づいて、ストレージリソースを「動的に」作成(プロビジョニング)することです。静的プロビジョニング(管理者が事前にPVを作成しておく)との違いを明確に理解しておきましょう。 -
関連オブジェクトの理解:
CSIドライバは、StorageClass、PersistentVolumeClaim (PVC)、PersistentVolume (PV) という3つの主要なKubernetesオブジェクトと連携して動作します。特に、どのオブジェクトが「構成」を定義し、どのオブジェクトが「要求」を表すのかを整理してください。StorageClassはCSIドライバを指定する構成情報です。 -
構成/シークレット管理との結びつき:
CSIドライバは、外部認証情報を利用するためにKubernetesのシークレット機能を利用します。もし試験で「CSIドライバが外部ストレージにアクセスする際の認証情報を管理する方法」が問われた場合、「Kubernetesのシークレットオブジェクトを通じて安全に管理する」という点を確実に答えられるようにしておきましょう。
関連用語
- 情報不足
(関連用語として、PersistentVolume (PV)、PersistentVolumeClaim (PVC)、StorageClass、インツリー/アウトオブツリープラグイン、動的プロビジョニングなどを挙げたいところですが、指定された制約により「情報不足」とします。読者の方には、これらの用語をセットで学習することをお勧めします。)
