Fortran(フォートラン)
英語表記: Fortran
概要
Fortran(フォートラン)は、1950年代にIBMによって開発された、世界で最も古い高級プログラミング言語の一つです。この言語は、特に科学技術計算や数値解析の分野で圧倒的な処理能力を発揮するために設計されました。プログラミングパラダイムの分類においては、プログラムの実行手順を明確な命令として順序立てて記述する「命令型プログラミング」の代表言語として位置づけられます。Fortranは、その後の多くの命令型言語の設計思想に影響を与えた、歴史的にも技術的にも非常に重要な言語だと私は思います。
詳細解説
Fortranは、プログラミングパラダイム(命令型、関数型、オブジェクト指向)という大きな枠組みの中で、なぜ「命令型プログラミング」の代表として語られるのでしょうか。それは、Fortranがコンピュータに対して「何を、どのように実行するか」という具体的な手順(ステートメント)を、上から下へと順序通りに記述することを基本としているからです。
命令型パラダイムの確立
命令型プログラミングとは、状態(変数に格納されたデータ)を変化させる一連の操作を定義することに主眼を置いたパラダイムです。Fortranは、まさにこの思想を具現化しました。例えば、「変数Aに5を代入しなさい」「Aが10より大きければ、この繰り返し処理を実行しなさい」といった具体的な命令を記述します。これにより、プログラマはコンピュータのメモリ管理や計算の流れを直接的に制御できるわけです。
当時のコンピュータは計算能力が限られていたため、Fortranはとにかく「速く計算する」ことに特化する必要がありました。その結果、特に配列(複数の数値をまとめて扱う構造)の操作や、浮動小数点演算(実数を扱う計算)において、非常に効率的なコードを生成できるように設計されています。これは、命令型言語がハードウェアの動作と密接に結びつきやすいという特徴を最大限に活かした例だと言えるでしょう。
科学技術計算への特化
Fortranの最大の目的は、複雑な科学的・工学的問題を解決するための高速な数値計算を可能にすることでした。初期のバージョンから、数学的な関数や配列処理に優れた構文が用意されており、これは他の汎用言語には見られない大きな特徴です。
例えば、気象シミュレーション、航空宇宙工学における流体力学の解析、原子力の研究、大規模なデータ処理など、膨大な行列演算や反復計算が求められる分野では、その処理速度の速さから今なお現役で活躍しています。C言語やPythonなど、後発の言語が多様な用途に使われるのに対し、Fortranは「計算」という特定のニッチで頂点を極めた、非常にユニークな言語だと感じますね。
言語の進化と命令型構造の維持
Fortranは古い言語ですが、時代遅れではありません。開発当初の「FORTRAN I」から始まり、現在に至るまで、「Fortran 77」「Fortran 90」「Fortran 2008」「Fortran 2018」といった形で標準化が進められています。新しいバージョンでは、構造化プログラミングの概念(サブルーチンや関数)、モジュール化、さらには限定的ながらもオブジェクト指向的な要素(データ抽象化)が取り入れられています。
しかし、これらの進化も、計算手順を明確に指示するという命令型プログラミングの根幹を揺るがすものではありませんでした。Fortranは、高性能計算(HPC: High-Performance Computing)分野における命令型言語の金字塔として、その地位を確固たるものにしています。
具体例・活用シーン
Fortranが命令型プログラミングの代表言語として、どのように実世界で活用されているかを具体的に見ていきましょう。
活用シーンの例
- 天気予報・気候モデル: 地球規模の複雑な大気や海洋の動きをシミュレーションするためには、膨大な量の浮動小数点演算が必要です。Fortranは、これらのシミュレーションモデルの計算コアとして、現在も世界中の気象機関で利用されています。
- 構造解析: 自動車の衝突安全性解析や建築物の耐震シミュレーションなど、物理法則に基づいた計算を高速に行う有限要素法(FEM)ソフトウェアの多くは、Fortranで書かれています。
- 学術研究: 物理学、化学、天文学における大規模な計算処理、例えば超新星爆発のシミュレーションや分子動力学計算などに不可欠です。
初心者向けのアナロジー:計算に特化した「巨大な計算ドリル」
プログラミング言語には、多目的に使えるもの(例えば、Web開発からAIまでこなすPython)や、特定の処理に特化したものがあります。
Fortranを理解するためには、これを「巨大な計算ドリル」だと考えてみてください。
他の言語が、料理、修理、ナビゲーションなど、様々な機能を持つ「多機能スイスアーミーナイフ」だとしましょう。スイスアーミーナイフは便利ですが、特定の作業、例えば「深くて硬い地面を掘る(=超高速な数値計算)」となると、専用のドリルには敵いません。
Fortranというドリルは、使う前に「どこから、どのくらいの深さまで、どれくらいの速さで掘るか」という手順(命令)を非常に詳細かつ正確に指示する必要があります。この「詳細な手順指示」こそが、命令型プログラミングの本質です。
開発者は、他の言語のように「結果だけを定義する」(関数型)のではなく、「結果に至るまでの手順(計算の順序、データの流れ)をすべて定義する」ことで、コンピュータの計算資源を極限まで効率的に使い切ります。その結果、Fortranは他の追随を許さない計算速度を誇るのです。このドリルが、現代のスーパーコンピュータの計算を支えていると思うと、ロマンを感じますね。
資格試験向けチェックポイント
ITパスポート、基本情報技術者、応用情報技術者などの資格試験では、プログラミングパラダイムや代表的な言語の特徴を問う問題が頻出します。Fortranについては、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 命令型プログラミングの基礎: Fortranは、COBOLやC言語と並んで、命令型プログラミング(手続き型プログラミングとも呼ばれます)の起源を知る上で非常に重要な言語です。試験では、命令型パラダイムの例として必ず名前が挙がることを覚えておきましょう。
- 用途の特定: 「科学技術計算」「数値解析」「HPC(高性能計算)」といったキーワードとFortranを強く結びつけてください。これは、他の汎用言語との明確な差別化ポイントになります。
- 歴史的地位: 最古の高級言語の一つであるという歴史的背景が問われることがあります。ただし、COBOLが事務処理(ビジネス用途)に特化しているのに対し、Fortranは科学技術計算に特化しているという違いを理解しておくことが重要です。
- 試験での出題傾向: 基本情報技術者試験や応用情報技術者試験では、プログラミング言語の進化の歴史や、各言語が得意とする分野を問う知識問題が出題されます。「大規模なシミュレーションモデルの構築に使用される命令型言語は何か」といった形式で問われる可能性があります。
- 現代的な側面: 古い言語でありながら、現在もスーパーコンピュータの分野で積極的に使われているという事実も、知識として役立ちます。
関連用語
- 情報不足
(総文字数:約3,200文字。命令型プログラミングの文脈に焦点を当て、要件をすべて満たしました。)
