Horizontal Pod Autoscaler

Horizontal Pod Autoscaler

Horizontal Pod Autoscaler

英語表記: Horizontal Pod Autoscaler

概要

Horizontal Pod Autoscaler (HPA)は、Kubernetesのデプロイメントやレプリカセットによって管理されるPodのレプリカ数(インスタンス数)を、実際の負荷に応じて自動的に調整する機能です。これは、オーケストレーション(Kubernetes)における「スケーリング」を動的かつ効率的に行うための、非常に重要な中核機能となっています。アプリケーションのパフォーマンスを維持しつつ、リソースの無駄遣いを防ぐ「弾力性」の実現に不可欠なコンポーネントです。

詳細解説

HPAは、オーケストレーション(Kubernetes, OpenShift)システムが提供する最も強力なメリットの一つ、すなわち「リソースの自動管理」を具現化しています。手動でサーバーの増減を管理する必要がなくなり、運用担当者の負担を劇的に軽減してくれます。

目的と背景

Kubernetesを活用する最大の目的は、アプリケーションの安定稼働と効率化です。Webサービスでは、時間帯やイベントによってトラフィックが大きく変動するのが常です。トラフィックが急増した際にPodの数が不足すると、ユーザー体験の低下やサービスダウンにつながります。逆に、ピークに合わせて常に最大数のPodを稼働させていると、コストが無駄になります。

HPAは、この課題を解決するために「Kubernetes 機能」として組み込まれています。PodのCPU使用率やメモリ使用量、あるいはネットワークトラフィックなどのカスタムメトリクスを継続的に監視し、設定された目標値(ターゲット)を上回った場合にPodの数を増やし(スケールアウト)、下回った場合にPodの数を減らす(スケールイン)処理を自動実行します。

仕組みと主要コンポーネント

HPAは、Kubernetesのコントロールプレーンの一部である「HPAコントローラー」として動作します。

  1. メトリクスの収集: HPAコントローラーは、定期的に(通常は数秒ごと)メトリクスサーバーからPodの利用状況(メトリクス)を取得します。最も一般的に使用されるメトリクスは、全Podの平均CPU使用率です。
  2. 目標値との比較: 取得した平均メトリクスが、ユーザーがHPAリソースで設定した目標値(例: CPU使用率50%)と比較されます。
  3. レプリカ数の計算: 目標値を超過していた場合、コントローラーは現在の負荷を処理するために必要なPodの理想的な数を計算します。
  4. スケーリングの実行: 算出された理想的なレプリカ数を、ターゲットとなるDeploymentやReplicaSetに適用するようAPIサーバー経由で指示します。

このプロセス全体が自動化されているため、HPAは「スケーリング」という複雑な運用タスクを、完全にシステム内に閉じ込めて処理してくれます。特にスケールイン(Podを減らす操作)の際には、急激なPodの削除を防ぐためのクールダウン期間が設定されており、安定性を重視した設計になっている点も素晴らしいですね。

スケーリングの文脈における重要性

HPAが担うのは、水平スケーリング(Horizontal Scaling)です。これは、既存のPodの性能を上げる(垂直スケーリング:VPAの役割)のではなく、Podそのものの「数」を増やすことで全体の処理能力を向上させる手法です。オーケストレーション環境においては、障害耐性を高めるためにも、Podを水平に分散させるHPAの機能が基本となります。

具体例・活用シーン

HPAの導入は、アプリケーション運用に劇的な変化をもたらします。

1. ECサイトの繁忙期対応

  • 状況: 年末年始のセールやブラックフライデーなど、特定期間にアクセスが集中するECサイト。
  • HPAの動作: 通常時はPodを最低限(例: 3つ)のみ稼働させます。セールが始まりCPU使用率が目標値(例: 60%)を超過すると、HPAはPodを自動的に最大数(例: 20個)までスケールアウトします。セール終了後、アクセスが落ち着けば、Pod数は自動的に元の3つに戻ります。
  • 効果: ユーザーは待たされることなく快適に買い物でき、企業はピーク時以外に不要なコンピューティングリソースに対する費用を支払う必要がなくなります。

2. コンサート会場の自動受付システム(比喩)

HPAの働きを理解するために、人気コンサート会場の自動受付システムを想像してみましょう。

  • 会場全体: Kubernetesクラスター(オーケストレーション環境)。
  • 受付窓口: Pod(アプリケーションのインスタンス)。
  • HPA: 受付窓口の数を調整するAIマネージャー。
  • メトリクス: 窓口の待ち行列の長さ(CPU使用率)。

通常、来場者が少ない時間帯は、受付窓口は3つだけ開いています。しかし、開場時刻が近づき、待ち行列が「5人」を超えた瞬間(設定されたしきい値)、AIマネージャー(HPA)は即座に新しい窓口を7つ追加でオープンさせます(スケールアウト)。これにより、待ち行列は解消されます。

コンサートが始まり、すべての来場者が入場した後、待ち行列がゼロになると、AIマネージャーは追加で開けた窓口を順次閉鎖します(スケールイン)。このように、HPAはまるで需要に応じて自動で人員配置を行う賢いマネージャーのような役割を果たしているのです。この自動化こそ、オーケストレーション環境で私たちが実現したい理想の姿だと感じますね。

資格試験向けチェックポイント

HPAは、Kubernetesやクラウドの弾力性に関連する概念として、特に応用情報技術者試験や基本情報技術者試験の午後問題で問われる可能性があります。

  • HPAの定義と役割: HPAは、水平スケーリング(Podの数)を自動化する機能であり、CPU使用率やカスタムメトリクスをトリガーとすることを理解しておく必要があります。垂直スケーリング(VPA)との違いを明確に区別しましょう。
  • Kubernetesの制御要素: HPAがKubernetesの「コントローラー」の一種であり、DeploymentやReplicaSetといったターゲットリソースのレプリカ数を操作することで機能している点が出題の鍵となります。
  • クラウドの弾力性(Elasticity): HPAは、クラウドコンピューティングの重要なメリットである「必要な時に必要なだけリソースを利用し、不要になれば解放する」という弾力性を実現する具体的な技術要素として結びつけて覚えましょう。ITパスポート試験レベルでも、クラウドのメリットを問う設問で関連づけられる可能性があります。
  • スケールアウトとスケールイン: 負荷が増加した際にPodの数を増やすことを「スケールアウト」、負荷が減った際にPodの数を減らすことを「スケールイン」と呼びます。この用語の定義は必須です。

関連用語

  • VPA (Vertical Pod Autoscaler)
  • Metrics Server
  • KEDA (Kubernetes Event-driven Autoscaling)
  • Deployment
  • ReplicaSet

関連用語に関する詳細情報(定義、HPAとの関係性)が不足しています。特に、HPAがPodの「数」を増やすのに対し、Pod内のリソース(CPU/メモリ)を増やすVPAとの対比は、オーケストレーションにおけるスケーリング戦略を理解する上で不可欠な知識となります。また、HPAが対応できないイベント駆動のスケーリングを実現するKEDAについても、併せて学習すると理解が深まります。

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この記事を書いた人

両親の影響を受け、幼少期からロボットやエンジニアリングに親しみ、国公立大学で電気系の修士号を取得。現在はITエンジニアとして、開発から設計まで幅広く活躍している。

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