IOPS(IOPS: アイオーピーエス)

IOPS(IOPS: アイオーピーエス)

IOPS(IOPS: アイオーピーエス)

英語表記: IOPS

概要

IOPS(Input/Output Operations Per Second)は、ストレージデバイスが1秒間に処理できる入出力(I/O)の回数を示す性能指標です。これは、私たちが扱う「情報の単位」であるデータ(バイト)を、どれだけ迅速に読み書きできるかを「計測とモニタリング」するための、非常に重要な「ストレージ指標」の一つなんですね。特にデータベースや仮想化環境など、小さなデータを頻繁にランダムに処理するシステムにおいて、その真価が問われる指標と言えます。高いIOPSを持つストレージは、多くの同時リクエストに対して迅速に応答できる能力を示しています。

詳細解説

IOPSは、ストレージ性能を客観的に評価するための最も基本的な尺度です。この指標の目的は、ストレージがシステムの要求に応えられる処理能力を持っているかを確認し、ボトルネックを特定することにあります。システム管理者にとっては、IOPSのモニタリングはストレージの健全性を把握する上で欠かせません。

動作原理と計測の仕組み

IOPSの計測は、ストレージに対して一定時間内に実行されたI/Oリクエストの総数を秒数で割ることで算出されます。ここでいうI/Oリクエストとは、データの読み込み(Read)または書き込み(Write)の操作のことです。

重要なポイントは、IOPSが「データの量(バイト)」ではなく、「処理の回数(オペレーション)」に焦点を当てている点です。例えば、1回で1MBのデータを読み込むのも、1回で4KBのデータを読み込むのも、どちらも1オペレーションとしてカウントされます。このため、IOPSは特にトランザクション処理能力、すなわち「どれだけ多くの細かい仕事をさばけるか」を測るのに適しています。

I/Oの種類とIOPS

IOPSの値は、I/Oの特性によって大きく変動します。

  1. ランダムI/O: データがストレージ上の様々な場所に散らばっており、処理のたびに物理的なアクセス位置が大きく変わる場合です。データベースのトランザクション処理やメールサーバーなど、多くのユーザーが同時に異なるデータを要求する環境で重要となります。高性能なSSDがHDDを圧倒するのは、物理的なシーク(探索)時間が不要なため、このランダムI/O性能が桁違いに高いからです。
  2. シーケンシャルI/O: データが連続した領域に格納されており、一連の処理が順番に行われる場合です。動画のストリーミング再生や大容量ファイルのバックアップなど、大容量のデータを効率よく転送したい場合に重要となります。この場合、IOPSよりも後述の「スループット」(転送速度)の方が重視される傾向がありますね。

階層構造との関連性

なぜIOPSが「情報の単位(ビット, バイト, KiB, MiB)」の文脈で重要なのでしょうか。それは、IOPSの値がI/Oの「ブロックサイズ」(データの単位)に大きく依存するからです。

ブロックサイズが小さい(例:4KB)場合、ストレージは同じ総量のデータ(例えば1MB)を転送するために、より多くの操作(1MB ÷ 4KB = 256回)を実行しなければなりません。つまり、ブロックサイズが小さいほど、IOPSは高くなります。逆に、ブロックサイズが大きいと、1回の操作で多くのデータを転送できるため、IOPSの値自体は低くなる傾向がありますが、スループット(転送量)は向上します。

このように、私たちが扱う情報の最小単位である「バイト」を、ストレージがどのように、そしてどれだけ頻繁に処理するかを「計測とモニタリング」する指標として、IOPSは欠かせない存在なのです。システム設計者は、必要なデータ単位(ブロックサイズ)に基づき、最適なIOPSを持つストレージを選択する必要があります。

具体例・活用シーン

IOPSの概念は、私たちが普段利用しているシステムの裏側で、その快適さを決定づけています。特に、多くのユーザーが同時にアクセスする環境では、IOPSの確保がサービス品質に直結します。

例1:VDI(仮想デスクトップインフラストラクチャ)環境

VDI環境では、数百人、数千人のユーザーが同時にログインし、アプリケーションを起動し、ファイルを保存・読み込みます。これらの操作は、非常にランダムかつ突発的なI/Oを生み出します。

  • 朝一のユーザー一斉ログイン時など、I/O負荷が急激に高まる「ブートストーム」が発生すると、ストレージのIOPSが不足しがちです。
  • IOPSが不足すると、ユーザーのデスクトップ画面の応答が遅れたり、アプリケーションの起動に時間がかかったりするため、ユーザー体験が著しく損なわれてしまいます。

比喩:スーパーマーケットのレジ打ちと店員のスキル

IOPSを理解するための良い比喩として、「スーパーマーケットのレジ打ち」を考えてみましょう。IOPSは、1秒間に何人のお客さんの会計を完了できるかという「処理能力」に相当します。

お店には二人(AさんとBさん)の店員がいます。

  • Aさん(高性能SSD): 非常に手際が良く、商品のスキャン、袋詰め、支払処理までが超高速です。お客さん(I/Oリクエスト)が次から次へと来ても、待たせることなく迅速に会計(データ処理)を完了できます。AさんのIOPSは非常に高いです。
  • Bさん(従来型HDD): 商品のスキャンや計算は早いのですが、お釣りを用意するのに時間がかかってしまいます(これが物理的なディスクのシーク時間やレイテンシに相当します)。結果として、一人のお客さんにかかる時間が長くなり、すぐにレジに行列(処理の遅延)ができてしまいます。BさんのIOPSは低いです。

もし、お店の経営者が「お客さんの待ち時間を減らしたい」と考えた場合、Aさんのような「高いIOPS能力」を持つレジ(ストレージ)を増強することが、サービス向上の鍵となるわけです。IOPSは、このように、サービス全体の迅速さを保証するための核心的な「計測とモニタリング指標」なのです。

資格試験向けチェックポイント

IT資格試験において、IOPSはストレージ性能評価の基本として頻出します。特に「計測とモニタリング指標」のセクションでは、他の指標との比較や、システム設計時の要件定義として問われます。

  • ITパスポート・基本情報技術者試験:
    • 定義の理解: IOPS
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この記事を書いた人

両親の影響を受け、幼少期からロボットやエンジニアリングに親しみ、国公立大学で電気系の修士号を取得。現在はITエンジニアとして、開発から設計まで幅広く活躍している。

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