レイテンシ (ms)(ms: ミリ秒)
英語表記: Latency (ms)
概要
レイテンシ(Latency)は、ITシステムにおいて、ある処理を要求してから、その応答が開始されるまでに発生する「待ち時間」を指す計測指標です。特にストレージシステムにおいては、CPUやアプリケーションからデータの読み書き要求(I/Oリクエスト)が送られてから、ストレージデバイスが実際にその処理を開始し、最初のデータが返送されるまでの遅延時間をミリ秒(ms、1000分の1秒)単位で計測します。この指標は、私たちが扱う情報の単位(ビット, バイト, KiB, MiB)をどれだけ迅速に処理できるかを評価する上で極めて重要となる、計測とモニタリング指標の一つです。
詳細解説
レイテンシは、情報の単位(ビット, バイト, KiB, MiB)を扱うストレージデバイスの性能を評価する上で、スループット(単位時間あたりの処理量)と並ぶ最も重要なストレージ指標です。レイテンシが低いほど、システムは要求に対して素早く反応できることを意味し、エンドユーザーの体感速度や、データベースのトランザクション処理速度に直結します。
階層における重要性
この概念が「情報の単位」を大カテゴリとする分類に含まれるのは、私たちがストレージに求める性能が、「データ量(KiBやMiB)」をいかに「短い時間(ms)」で処理できるかという点にあるからです。レイテンシは、ストレージデバイスが特定のデータブロック(通常、4KiBなどの単位)を処理するために費やす時間コストを明確に示します。
レイテンシが発生する要因と動作原理
ストレージにおけるレイテンシは、単なる「待ち時間」ではなく、いくつかの物理的・論理的な工程の合計時間です。
- キューイング時間(待ち行列時間): OSやストレージコントローラー内で、I/Oリクエストが処理待ちとなる時間です。リクエストが集中すると、この時間が長くなります。
- デバイスアクセス時間: 実際にストレージメディアにアクセスする時間です。
- HDDの場合: シーク時間(目的のトラックにヘッドを移動させる時間)と回転待ち時間(目的のセクタがヘッドの下に来るまでディスクが回転する時間)が支配的です。これらの物理的な動作により、HDDのレイテンシは通常数ミリ秒から数十ミリ秒となります。
- SSDの場合: シークや回転の概念がなく、NANDフラッシュメモリへのアクセスとコントローラーの処理時間が主となります。このため、SSDのレイテンシはマイクロ秒(µs、100万分の1秒)単位に近づき、非常に低速です。
- データ転送時間: 読み出されたデータがストレージコントローラーを経由し、ホスト(CPU)に戻されるまでの時間です。
特にデータベースや仮想化環境のように、大量の小さなデータ(KiB単位)を頻繁に読み書きするシステムでは、スループットの高さよりも、このレイテンシの低さがシステム全体の応答性を決定づけます。レイテンシがわずか数ミリ秒増えるだけでも、システム全体のボトルネックとなり得るため、計測とモニタリング指標として常に厳しく監視されています。
具体例・活用シーン
1. データベース(OLTP環境)
銀行のATM取引やECサイトの注文処理など、リアルタイムで小さなトランザクションを大量に処理するOLTP(On-Line Transaction Processing)環境では、レイテンシの監視が欠かせません。もしストレージのレイテンシが通常1msであるべきところ、一時的に5msに上昇した場合、数千の同時トランザクションが待機状態となり、システム全体が遅延します。このため、高性能なデータベースシステムでは、極めてレイテンシの低いNVMe SSDが採用されます。
2. 仮想デスクトップ基盤(VDI)
VDI環境では、数百人、数千人のユーザーが同時にログインし、アプリケーションを起動したり、ファイルを保存したりします。ユーザーが一斉に操作を開始する「ブートストーム」や「ログインストーム」が発生した際、ストレージのレイテンシが高いと、ユーザーはマウス操作がカクカクしたり、アプリケーションの起動に時間がかかったりといったストレスを感じます。低レイテンシを維持することは、快適なユーザー体験を保証するための最重要課題です。
3. アナロジー:図書館の司書と本の検索時間
レイテンシを理解するための良いアナロジーとして、「図書館で本を探す時間」を考えてみましょう。
あなたは図書館のカウンターで司書(ストレージコントローラー)に特定のデータ(本の情報、例えば「2024年発行のITパスポート対策本」)を要求しました。
- 要求から応答開始までの時間(レイテンシ): これは、司書があなたの要求を受け取ってから、実際に書架に向かい、本を見つけ出し、あなたの手元に差し出す動作を開始するまでにかかる時間です。
- HDDという名の古い図書館: 司書は広大な書架を歩き(シーク時間)、本の山を回転させながら(回転待ち時間)、目的の場所を探します。時間がかかり、レイテンシは長くなります。
- SSDという名の最新デジタルライブラリ: 司書(コントローラー)は要求を受け取ると、電子的に瞬時に本の場所を特定し、すぐに取り出します。この応答開始までの時間が極めて短いため、レイテンシは低くなります。
ここで重要なのは、レイテンシが測定するのは、本のデータ全体(情報の単位)を読み終えるまでの時間ではなく、応答が開始されるまでの「待ち」の時間であるという点です。この待ち時間が短いほど、システムは効率的に動作していると評価できます。
資格試験向けチェックポイント
IT関連の資格試験、特にITパスポートや基本情報技術者試験、応用情報技術者試験では、ストレージ性能指標に関する理解が頻繁に問われます。
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レイテンシとスループットの区別:
- レイテンシは「待ち時間(時間)」であり、応答性の指標です。単位はmsやµsです。
- スループットは「単位時間あたりの処理量(量)」であり、大量データの処理能力の指標です。単位はMB/s(メガバイト/秒)やGbps(ギガビット/秒)です。
- 出題パターン: 「システムの応答速度を測る指標として最も適切なものはどれか?」といった形で、レイテンシとスループットを混同させる選択肢が出されます。応答性=レイテンシと覚えておきましょう。
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レイテンシを短縮する技術:
- HDDからSSD(SATA/SAS)への移行、さらにNVMe SSD(PCI Express接続)への移行が、レイテンシを劇的に短縮する主要な技術であることを理解しておく必要があります。NVMeは従来のストレージインターフェースよりもプロトコルのオーバーヘッドが低いため、特に低レイテンシが求められます。
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IOPSとの関係:
- IOPS(Input/Output Operations Per Second:1秒あたりのI/O処理回数)は、レイテンシと密接に関係します。レイテンシが低ければ低いほど、1秒間に処理できるI/O回数(IOPS)は増大します。
- 応用情報レベル: ストレージ性能の計算問題において、レイテンシがボトルネックとなっている場合の最大IOPSを計算させる問題が出ることがあります。
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文脈の理解:
- レイテンシはネットワーク通信やメモリにおいても使われる用語ですが、ストレージ指標として問われる場合は、特にHDDとSSDの構造的な違いによる物理的な待ち時間の差を理解しているかが重要です。
関連用語
- 情報不足
(注記:この文脈で関連する用語としては「スループット (Throughput)」「IOPS (I/O Operations Per Second)」「シーク時間 (Seek Time)」「NVMe」などが挙げられますが、具体的な関連用語の定義や解説のための入力情報が不足しています。そのため、ここでは規定に従い「情報不足」と記載しています。)
