Live Migration(ライブマイグレーション)
英語表記: Live Migration
概要
ライブマイグレーションは、仮想マシン(VM)の稼働を中断することなく、ある物理ホストサーバーから別のホストサーバーへ移動させる技術です。特にMicrosoft Hyper-Vにおいて、これは「統合機能」の一つとして提供されており、システムの高可用性(HA)とメンテナンスの柔軟性を劇的に向上させます。ユーザーやアプリケーションに停止を意識させないまま、基盤となるハードウェアのメンテナンスや負荷分散を可能にする、現代のエンタープライズ仮想化環境においては欠かせない、非常に重要な機能なのですよ。
詳細解説
ライブマイグレーションは、私たちが仮想化技術(VMware, Hyper-V, KVM)の文脈、特にMicrosoft Hyper-Vの「統合機能」として語る際、その真価を発揮します。この機能の最大の目的は、計画的なダウンタイムをゼロにすることです。
1. ライブマイグレーションの必要性と目的
物理サーバーには、OSのセキュリティパッチ適用、ハードウェアの交換、ファームウェアのアップデートなど、定期的なメンテナンスが必須です。しかし、基盤となるサーバーを停止させると、その上で動いているすべてのサービスが停止してしまいます。ライブマイグレーションを利用すれば、サービスを稼働させたまま、メンテナンス対象のホストから稼働中のVMを退避させることが可能です。これにより、24時間365日稼働が求められるシステム運用が現実のものとなるのです。
2. Hyper-Vにおける主要な構成要素
Hyper-V環境でライブマイグレーションを成功させるためには、単にVMがあるだけでは不十分で、いくつかの高度な「統合機能」とインフラストラクチャの連携が必要です。
- フェールオーバークラスター(Failover Clustering): 複数の物理サーバーを束ね、高可用性を実現するための基盤です。ライブマイグレーションは、このクラスター環境内で最も効果的に利用されます。クラスターマネージャーが移動の調整役となります。
- 共有ストレージ: 仮想マシンの構成ファイルやVHDXファイル(仮想ディスク)を、移動元と移動先の両方のホストが同時にアクセスできる場所(共有ストレージ)に配置する必要があります。Hyper-Vでは、主にクラスター共有ボリューム(CSV: Cluster Shared Volume)や、高速なSMB 3.0ファイル共有が利用されます。VMのデータが移動しない(移動するのはメモリと状態だけ)ため、高速なマイグレーションが可能になるのです。
- 高速ネットワーク: VMのメモリ内容を転送するため、ホスト間のネットワークは非常に高速である必要があります(通常は10Gbps以上)。
3. 動作の仕組み(メモリの転送プロセス)
ライブマイグレーションの核心は、稼働中のVMの「状態」をいかに短時間で、かつ正確に移動させるかにあります。
- 準備フェーズ: 移動元のホストと移動先のホストが連携を開始し、VMの構成情報(CPU、デバイス情報など)が移動先にコピーされます。
- メモリコピー(イタレーション): VMが使用しているメモリの内容が、移動元のホストから移動先のホストへ継続的に転送されます。VMは稼働を続けているため、メモリの内容は常に変化しています。
- デルタコピーと収束: 初期のメモリコピー中に発生した、メモリの変更部分(デルタ)を繰り返し転送します。この転送速度が、VMで発生するメモリ変更速度を上回ることが重要です。Hyper-Vの技術は、このデルタコピーの回数を減らし、最終的な移行時間を短縮するように最適化されています。
- 最終フェーズ(スイッチオーバー): デルタコピーが十分小さくなった時点で、VMのCPUレジスタやデバイスの状態など、最後の微細な状態情報が転送されます。この瞬間に、VMの実行が移動元のホストで一時停止し、移動先のホストで再開されます。この停止時間は通常、わずか数百ミリ秒(ユーザーにはほぼ感知されないレベル)です。
- ネットワークの更新: 移動先のホストがVMのMACアドレスを引き継ぎ、ネットワークスイッチにARPパケットを送信して、VMの新しい物理的な場所を通知します。これにより、外部からの通信が即座に新しいホストへルーティングされるようになります。
このように、ライブマイグレーションは、Hyper-Vが提供する「統合機能」と、クラスターおよびストレージ技術が高度に連携することで成立している、非常に洗練された技術なのです。
具体例・活用シーン
ライブマイグレーションが最も力を発揮するシーンは、システムの信頼性を確保しながら、運用コストを削減したい場合です。
- 計画的なハードウェアメンテナンス:
- 週末にホストサーバーのOSやファームウェアを更新する必要が生じました。通常であればサービスを停止しますが、ライブマイグレーションを利用すれば、稼働中のVMを別の健全なホストへ次々と移動させ、メンテナンス対象のホストを安全にシャットダウンできます。サービスは停止しません。
- 動的な負荷分散(ロードバランシング):
- 特定の時間帯に特定のホストに負荷が集中し、パフォーマンスが低下し始めました。システム管理者は、高負荷のVMを、負荷の低い別のホストへライブマイグレーションで移動させることにより、環境全体のパフォーマンスを均一に保つことができます。
- 古いハードウェアの段階的な廃止:
- 新しい高性能なサーバーを導入する際、古いサーバーから新しいサーバーへ、サービスを稼働させたままVMを移行させることが可能です。これにより、移行作業のためにサービス停止期間を設ける必要がなくなります。
仮想化環境における「引っ越し」のメタファー
ライブマイグレーションを初心者の方に説明する際、私はよく「新幹線の中での座席移動」に例えます。
想像してみてください。あなたは新幹線(仮想マシン)に乗って、東京から大阪へ向かっています。この新幹線は、ある駅(ホストサーバーA)から出発しましたが、途中で車両を点検する必要が出てきました。
通常の移行(クイックマイグレーションなど)であれば、新幹線をいったん完全に停車させ、乗客(サービス)を全員降ろしてから、別の新幹線に乗り換えさせる必要があります(=ダウンタイム)。
しかし、ライブマイグレーションでは、新幹線が時速200kmで走り続けている最中、乗客(メモリ内容)が全く気づかないうちに、車両の土台(ホストサーバーのCPU、メモリ)をそっくりそのまま、隣の走行中の車両(ホストサーバーB)に接続し、切り替えてしまうようなものです。
新幹線(VM)は一瞬たりとも止まらず、乗客は移動が完了したことすら気づきません。このように、サービスを継続させたまま、裏側のインフラストラクチャを交換できるのが、ライブマイグレーションの素晴らしい点なのです。これは、Hyper-Vが提供する「統合機能」の中でも特に利用者満足度の高い機能だと言えるでしょう。
資格試験向けチェックポイント
ライブマイグレーションは、IT Passportでは概念理解、応用情報技術者試験やその周辺知識を問う試験では、実現に必要な技術要素やメリットが頻出します。
- ITパスポート/基本情報技術者試験レベル:
- 定義の理解: 「稼働中の仮想マシンを停止させずに、物理ホスト間を移動させる技術」であることを正確に覚えておきましょう。
- メリット: ダウンタイムなしでのメンテナンス、高可用性の実現、負荷分散を可能にする点。
- 応用情報技術者試験レベル(Hyper-V/VMwareの知識が問われる場合):
- 必須要件: ライブマイグレーション実現のために「フェールオーバークラスター」と「共有ストレージ(CSVやSAN)」が必須であることを理解してください。特に、データ(VHDX)そのものは移動せず、メモリと状態のみが転送されるメカニズムを把握することが重要です。
- 旧技術との対比: かつて存在した「クイックマイグレーション」(VMを一時停止させて移動させる)との違いを理解し、ライブマイグレーションが提供する「ゼロダウンタイム」が運用上いかに優れているかを説明できるようにしておくと万全です。
- 分類の確認: この技術が、Hyper-Vの「高可用性」や「統合機能」のカテゴリに分類されることを、文脈として理解しておきましょう。
関連用語
- 情報不足
(関連用語として、このライブマイグレーションを支える技術要素である「フェールオーバークラスター」「クラスター共有ボリューム(CSV)」「SMB 3.0」などを挙げたいところですが、指示に従い「情報不足」といたします。これらの用語は、ライブマイグレーションをHyper-Vの「統合機能」として理解する上で、ぜひセットで学習していただきたい要素です。)
