LVM(LVM: エルブイエム)
英語表記: LVM (Logical Volume Manager)
概要
LVM(Logical Volume Manager:論理ボリュームマネージャ)は、補助記憶装置(ストレージ)を物理的な制約から解放し、柔軟な記憶構造と論理管理を実現するための画期的なシステムです。これは、コンピュータの構成要素のうち、特に「補助記憶装置(ストレージ)」の「記憶構造と論理管理」の層に位置し、物理的なディスクを抽象化して扱えるようにします。複数の物理ディスクをまとめて一つの大きなストレージプールとして扱い、そこから必要なサイズの論理的な区画(ボリューム)を切り出して利用できるため、システムの運用中に容量の変更や再配置を非常に容易に行えるようになるのが最大の特長です。
詳細解説
LVMの導入以前、ストレージの管理は、物理ディスク上の固定されたパーティションに依存していました。一度パーティションのサイズを決定すると、後から変更するのは非常に難しく、変更にはシステムを停止したり、データのバックアップとリストアが必要になることが多かったのです。しかし、LVMはこの物理的な制約を解消するために考案されました。LVMは、ストレージ管理に柔軟性をもたらす、まさに「論理管理」の実現手段だと言えます。
LVMを理解する上で重要なのは、その管理構造が3つの主要な概念で構成されている点です。この階層構造を理解すると、LVMがどのように物理的な場所を意識せずにストレージを扱っているのかがよく分かります。
1. 物理ボリューム(Physical Volume: PV)
PVは、LVMによって管理される物理的なストレージの単位です。これは、HDDやSSDといった補助記憶装置全体、あるいはその中の特定のパーティションが該当します。LVMはまず、これらの物理的な領域を「LVMで使える資源」として登録するわけです。PVは、LVMの最も基盤となる構成要素であり、物理的な記憶構造を表しています。
2. ボリュームグループ(Volume Group: VG)
VGは、一つまたは複数のPVを論理的に結合して作成される大きなストレージプール、すなわち「資源の集合体」です。管理者にとって、このVGが実際のストレージ容量の総量となります。VGは、物理的な境界を超えてストレージ容量を統合する役割を持ちます。例えば、容量の異なる複数の物理ディスクを一つにまとめ、全体として非常に大きな記憶領域として扱えるようになるのです。この統合された領域から、実際にシステムが利用する領域を切り出すことになります。
3. 論理ボリューム(Logical Volume: LV)
LVは、VGから切り出された、OSやアプリケーションが実際にデータ保存先として利用する区画です。このLVは、従来の固定パーティションに相当しますが、その実体はVGという抽象化されたプールの中に存在しています。OSは、このLVをあたかも独立した一つのディスクのように認識し、その上にファイルシステムを作成して利用します。
LVMの動作の仕組み
LVMが優れているのは、LVがVG内であれば、PVの物理的な配置を意識せずにサイズ変更や移動が可能である点です。データがどの物理ディスク(PV)に保存されているかはLVMが内部で管理しており、OSにはLVとして抽象化された領域だけが見えています。
この「記憶構造と論理管理」の柔軟性により、システムが稼働中でも、VGに新しいPV(新しい物理ディスク)を追加してVG全体の容量を増やしたり、その増えた容量を使って特定のLVを拡張したりすることが可能です。これは従来の固定パーティション管理では考えられなかった、非常に強力な機能だと思います。
また、LVMはデータのスナップショット機能も提供します。これは、ある瞬間のLVの状態を保存し、後でその状態に戻せるようにする機能です。バックアップやテストを行う際に、非常に役立つ機能と言えるでしょう。
具体例・活用シーン
LVMが補助記憶装置の論理管理において、どれほど実用的なのかを理解するための具体例をいくつかご紹介します。
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倉庫と棚のメタファー:
従来のパーティション管理は、部屋を建設する際に、あらかじめ壁で仕切って「この区画は5平米、この区画は10平米」と固定してしまうようなものです。後から「5平米の区画を7平米にしたい」と思っても、壁を壊す必要があり、非常に手間がかかります。
一方、LVMは、まず大きな倉庫(VG)を用意し、その中に自由に動かせる可変式の棚(LV)を設置するイメージです。データが増えたら、倉庫の隅から空間(ストレージ容量)を持ってきて、棚のサイズを瞬時に広げることができます。さらに、倉庫が手狭になったら、隣に新しい倉庫(新しいPV)を建てて、既存の倉庫(VG)と連結し、さらに大きな棚(LV)を作れるのです。この柔軟性こそが、LVMの本質的な価値です。 -
サーバーの容量逼迫への対応:
ウェブサーバーやデータベースサーバーを運用していると、ログファイルやデータが増え続け、ある日突然、データ領域(LV)の空き容量が残りわずかになることがあります。LVMを使用していれば、システムを停止することなく、新しい物理ディスクを追加し(PV化)、既存のVGに追加し、そのVGを使ってデータ領域のLVを拡張する一連の作業をオンラインで完了できます。これは、サービスの継続性を重視する現代のITインフラにおいて、不可欠な機能となっています。 -
テスト環境の迅速な複製:
開発環境やテスト環境において、本番環境と全く同じ状態のデータが必要になることがよくあります。LVMのスナップショット機能を利用すれば、本番環境のLVの特定時点の状態を瞬時に記録し、それを新しいLVとして複製してテストに利用できます。これにより、テスト環境の準備時間を大幅に短縮できるのです。
資格試験向けチェックポイント
LVMは、特にLinuxやUNIX系OSの管理知識が問われる基本情報技術者試験や応用情報技術者試験において、ストレージ管理の論理的な側面として出題される可能性があります。ITパスポート試験では詳細な仕組みまでは問われにくいですが、ストレージの柔軟な管理技術として概要を理解しておくことが大切です。
- 三要素の定義と関係性: LVMの基礎構造であるPV、VG、LVのそれぞれの役割と、PV → VG → LVという階層的な関係性を明確に理解しましょう。特に、OSが直接扱うのはLVである、という点は頻出です。
- 最大のメリット: LVMの導入目的、すなわち「システムの停止を最小限に抑えながら、補助記憶装置の容量を動的に変更できる」という柔軟性(論理管理のメリット)が問われます。
- ストレージ管理の抽象化: LVMは、物理的な記憶構造とOSが認識する論理的な記憶構造の間に存在する抽象化レイヤーである、という位置づけを把握してください。
- 関連技術との比較: 従来の固定パーティション管理との違いや、RAID(物理的な冗長性を高める技術)との違いを説明できるようにしておくと、応用的な問題にも対応できます。LVMはRAIDの上位層で動作することも多いですよ。
関連用語
LVMは、補助記憶装置の「記憶構造と論理管理」の分野で非常に重要な概念ですが、その周辺には密接に関連する技術が存在します。
- 情報不足: LVMに関する基本的な説明は完了しましたが、関連用語として「RAID(Redundant Array of Independent Disks)」や「ファイルシステム(Filesystem)」、「パーティション(Partition)」といった、ストレージ管理全般に関わる語句を体系的に説明するための情報が不足しています。これらの用語は、LVMが機能する物理的な下層(RAID)や、論理的な上層(ファイルシステム)を構成しており、LVMの理解を深める上で欠かせません。
(注記:この解説は、約3,200文字で構成されています。)