NFS/SMB(エヌエフエス/エスエムビー)

NFS/SMB(エヌエフエス/エスエムビー)

NFS/SMB(エヌエフエス/エスエムビー)

英語表記: NFS/SMB

概要

NFS(Network File System)とSMB(Server Message Block)は、ネットワークを通じて遠隔地にあるストレージ(HDDやSSD)上のファイルを共有・操作するためのファイル共有プロトコルです。これらは、データをファイル単位でやり取りする「ファイルレベル」のアクセス方式を規定しており、ストレージデバイス(HDD, SSD, NVMe)のデータをネットワーク経由で利用可能にする「ストレージプロトコル」の一種に分類されます。特に、NAS(Network Attached Storage)といった共有ストレージ環境において、クライアントPCがサーバー上のファイルシステムにアクセスするための「言語」として機能しています。

詳細解説

NFSとSMBは、私たちが普段利用しているストレージデバイスのデータを、ネットワーク経由で効率的に利用可能にするための非常に重要な仕組みです。この階層構造(ストレージ接続とネットワーク → ストレージプロトコル)において、NFS/SMBは「ファイルレベル」でのアクセスを提供する点が、他のブロックレベルプロトコルと明確に異なる特徴です。

1. NFS(Network File System)

NFSは主にUNIXやLinux環境で発展してきたプロトコルで、サン・マイクロシステムズ(当時)によって開発されました。クライアント側からサーバー側のファイルシステムをローカルドライブのようにマウント(接続)することで、透過的なアクセスを実現します。認証には主にUNIXのユーザーID/グループIDが使用されることが多く、シンプルさと高いパフォーマンスが特徴です。特に大規模なUNIXサーバー群や高性能計算(HPC)環境などで、共有ストレージへのアクセス基盤として今もなお非常に重宝されています。オープンソース環境での利用が多いため、柔軟性も高いのが魅力だと感じています。

2. SMB(Server Message Block)

SMBは、主にMicrosoft Windows環境でファイル共有を実現するために開発されました。初期のバージョンはCIFS(Common Internet File System)とも呼ばれていましたが、現在ではSMBとして進化し、高いセキュリティ機能と複雑なアクセス制御を提供しています。Windowsの「共有フォルダ」機能の裏側で動いているのが、まさにこのSMBプロトコルなのです。バージョンアップ(SMB 3.xなど)ごとにセキュリティやパフォーマンスが大幅に改善されており、現代のエンタープライズ環境におけるWindowsサーバー間やクライアントPCとの連携には欠かせない存在となっています。

ストレージプロトコルとしての役割

NFS/SMBが「ストレージプロトコル」として重要なのは、それがファイルレベルプロトコルであるという点です。

一般的なストレージ接続プロトコルには、データをブロック単位でやり取りするiSCSIやFibre Channel(ファイバーチャネル)といったブロックレベルプロトコルがあります。これらはストレージをOSから見てあたかもローカルディスクのように扱わせるため、非常に高速ですが、同時に複数のクライアントで共有することが難しい場合が多いです。

一方、NFS/SMBは、ファイル名やディレクトリ構造といった「ファイルシステムの情報」を含めてやり取りします。これにより、複数のユーザーやクライアントが同時に、かつ安全に、ファイル単位でデータを読み書きできるようになるのです。これは、複数のユーザーで同じストレージ資源を共有したいというニーズ(ストレージ接続とネットワークの文脈)に完璧に応える仕組みです。この「共有性」こそが、NFS/SMBがネットワークストレージ環境、特にNASにおいて主役を張る理由であり、ストレージ接続の多様性を支える重要な要素だと私は考えています。

具体例・活用シーン

NFS/SMBは、私たちが意識しないところで日々、ストレージへのアクセスを支えてくれています。

  • 企業の共有フォルダ: 会社内で「部門共有フォルダ」や「プロジェクトフォルダ」として使われているネットワーク上のドライブは、ほとんどの場合、裏側でSMBプロトコルが動いています。クライアントPCがファイルサーバーに「このファイルを開きたい」というメッセージ(SMBメッセージ)を送り、サーバーがそれに応じてデータブロックを返送しているわけです。私たちがエクスプローラで共有フォルダを開くたびに、このプロトコルが働いているのですね。
  • NAS(ネットワーク接続ストレージ)の利用: 家庭や中小企業でバックアップやデータ共有に利用されるNAS製品は、標準でNFSとSMBの両方に対応していることが一般的です。WindowsユーザーはSMBを、MacやLinuxユーザーはNFS(またはSMB)を使って、同じストレージ上のデータにアクセスしています。これは、異なるOS環境にあるストレージデバイスを統一的に利用するための、非常に実用的な解決策です。
  • 仮想化環境におけるデータストア: VMwareやHyper-Vなどの仮想化基盤において、仮想マシンのディスクイメージ(VMDKやVHDXファイル)をNAS上に配置する際に、NFSがデータストアプロトコルとして利用されることがあります。これは、NFSがファイル共有に優れており、大規模なファイルアクセスを効率的に処理できるためです。

初心者向けのアナロジー:図書館の共有棚

NFS/SMBの役割を理解するために、これを「図書館の共有棚にアクセスするためのルール」だと考えてみましょう。

巨大な図書館(ネットワークストレージサーバー)には、多くの本(ファイル)が保管されています。利用客(クライアントPC)は、本を借りたいとき、直接書庫(HDD/SSD)に入って本を探すことはできません。なぜなら、直接アクセスしてしまうと、他の利用客と衝突したり、本がどこにあるか分からなくなってしまうからです。

ここで、NFSやSMBという「受付窓口とルール」が登場します。このルールが、ストレージ接続におけるファイルの安全なやり取りを保証するのです。

  1. 窓口(プロトコル): 利用客は、どのルール(NFSまたはSMB)を使って本にアクセスするかを決めます。
  2. リクエスト: 「『IT用語集』というタイトルの本を借りたい」と窓口に伝えます。
  3. アクセス制御: 窓口の係員(サーバー)は、利用客がその本を借りる権限があるか(認証/アクセス権限)を確認します。特にSMBは、利用者が誰であるか、どの本にアクセスできるかを厳格にチェックします。
  4. 本の受け渡し: 係員は書庫(ストレージデバイス)から本を探し出し、利用客に手渡します
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この記事を書いた人

両親の影響を受け、幼少期からロボットやエンジニアリングに親しみ、国公立大学で電気系の修士号を取得。現在はITエンジニアとして、開発から設計まで幅広く活躍している。

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