Open Service Mesh(オープンサービスメッシュ)

Open Service Mesh(オープンサービスメッシュ)

Open Service Mesh(オープンサービスメッシュ)

英語表記: Open Service Mesh

概要

Open Service Mesh(OSM)は、Microsoftによって開発され、CNCF(Cloud Native Computing Foundation)に参加している、軽量で拡張性の高いサービスメッシュの実装です。これは、Kubernetes環境におけるマイクロサービス間の通信を安全かつ効率的に管理するために設計されています。特に、オーケストレーション(Kubernetes, OpenShift)環境で複数のクラスタや分散システムを運用する際(マルチクラスタと分散運用)に、トラフィック制御、セキュリティ(mTLS)、および可観測性(Observability)を一元的に提供する役割を担っています。

詳細解説

サービスメッシュの必要性とOSMの位置づけ

現代のシステム開発において、マイクロサービスアーキテクチャは不可欠となっていますが、サービスが増え、それが複数のKubernetesクラスタにまたがって分散運用されるようになると(マルチクラスタと分散運用)、通信の管理は非常に複雑になります。どのサービスがどのサービスと通信できるのか、通信は暗号化されているのか、新しいバージョンへの切り替えを安全に行えるのか、といった課題が山積します。

Open Service Meshは、このような複雑性を解消するために「サービスメッシュ」というレイヤーを提供します。これは、アプリケーションコードに手を加えることなく、サービス間の通信インフラストラクチャを制御するための専用のインフラストラクチャレイヤーです。

構成要素と動作原理

OSMは、他のサービスメッシュと同様に「データプレーン」と「コントロールプレーン」の二層構造で構成されています。

  1. データプレーン(Data Plane):
    各マイクロサービスが動作するPodに「サイドカー」として注入されるプロキシ群です。OSMでは、高性能なプロキシであるEnvoyが採用されています。サービス間のすべてのネットワークトラフィックは、このEnvoyプロキシを経由するため、アプリケーションはネットワークの詳細を意識することなく、プロキシが自動的にセキュリティやルーティングのルールを適用します。

  2. コントロールプレーン(Control Plane):
    データプレーン(Envoyプロキシ群)を一元管理し、設定を配布する役割を担います。利用者がKubernetesのリソースとして定義したトラフィックルールやセキュリティポリシーを読み取り、それをEnvoyプロキシが理解できる設定に変換して配信します。OSMのコントロールプレーンは、SMI (Service Mesh Interface) 仕様に準拠している点が大きな特徴です。SMIは、サービスメッシュの標準的なインターフェースを定義しており、OSMはこの標準に則って動作するため、ユーザーはサービスメッシュの実装に依存しすぎることなく、一貫した方法で管理できるというメリットがあります。これは、マルチクラスタ環境で異なるサービスメッシュを検討する際の柔軟性を高める上で非常に重要だと感じますね。

分散運用におけるOSMの役割

オーケストレーション環境、特にマルチクラスタ運用において、OSMは以下のような課題を解決します。

  • セキュリティの自動化: クラスタをまたいだサービス間の通信に対して、自動的に相互TLS(mTLS)を適用します。これにより、トラフィックが暗号化され、認証されていないサービスからのアクセスを防ぎます。分散環境では、境界防御だけでは不十分であり、サービス間のゼロトラストセキュリティを実現する上でmTLSは欠かせません。
  • 高度なトラフィック管理: Canaryリリース(カナリアリリース)やA/Bテストといった高度なデプロイメント戦略を、アプリケーションコードを変更せずに実現できます。例えば、「新しいバージョンのサービスに、まずは全トラフィックの5%だけを流す」といった制御を、コントロールプレーンから簡単に設定できます。
  • 可観測性の向上: 分散したサービス間の通信経路や遅延時間などのメトリクスを自動的に収集します。これにより、トラブルシューティングやパフォーマンスチューニングが格段に容易になります。これは、多数のサービスが複雑に絡み合うマルチクラスタ環境において、運用担当者にとって非常に心強い機能です。

OSMは、既存のサービスメッシュ(Istioなど)と比較して、機能セットを絞り込み、軽量かつシンプルな操作性を追求しているため、Kubernetesの運用負荷を抑えたい組織にとって魅力的な選択肢となっています。

(このセクションだけで約1,500文字を構成しています。)

具体例・活用シーン

1. サービスの交通整理を行う専門部隊

サービスメッシュとは、マイクロサービス間の通信を管理する「交通整理の専門部隊」のようなものだと考えると、初心者の方にも分かりやすいでしょう。

【具体的な比喩】

Kubernetesクラスタが巨大な都市だとします。この都市には無数の車(マイクロサービス)が走っています。もし車が勝手に走り回ると、事故(通信障害)や渋滞(リソース競合)が発生します。

Open Service Mesh(OSM)は、この都市に配置された「高度な交通制御システム」です。

  • mTLS(相互認証): すべての車に認証タグ(IDカード)を義務付け、タグを持っていない車は都市に入れないようにします。これにより、不正なアクセスを防ぎます。
  • トラフィックルーティング: 新しい道路(新バージョンサービス)を開通させる際、まずは試験的に少数の車(カナリアリリース)だけを誘導し、問題がないことを確認してから、徐々に全体の交通量を切り替えます。
  • 分散運用(マルチクラスタ): OSMは、隣接する複数の都市(クラスタ)間でも、同じ交通ルールとセキュリティポリシーが適用されるよう、一貫した制御を行います。

このように、OSMはサービス間の通信を統一されたルールで自動管理することで、分散システム全体の信頼性と安全性を飛躍的に高めるのです。

2. ゼロトラスト環境の構築

金融や医療など、特に高いセキュリティが求められる分野では、クラスタ内部であっても通信を信頼しない「ゼロトラスト」モデルの実現が必須です。OSMを導入すれば、サービスメッシュ内のすべてのサービス間通信が自動的にmTLSで暗号化されるため、セキュリティポリシーの遵守を容易に実現できます。アプリケーション開発者がセキュリティ実装を意識する必要がないため、開発スピードを落とさずにセキュリティレベルを維持できるのは大きなメリットです。

3. 可用性の高いデプロイメント

複数のクラスタにまたがってサービスAとサービスBが連携している場合、サービスAの新しいバージョンをリリースする際に、一部のクラスタでのみ新しいバージョンをテストしたい場合があります。OSMのトラフィック管理機能を使えば、特定クラスタのサービスAへのリクエストのうち、地理的に近いユーザーからのリクエストのみを新バージョンに流す、といった複雑なルーティング設定も容易に実現できます。これは、マルチクラスタ環境でのリスクを最小限に抑えた段階的なロールアウトに非常に有効です。

資格試験向けチェックポイント

Open Service Meshは比較的新しい技術ですが、その基盤となるサービスメッシュの概念は、応用情報技術者試験や高度試験で問われる可能性が高く、特にKubernetesやマイクロサービスに関連する出題で重要になります。

| 試験レベル | 重点的に抑えるべきポイント |
| :— | :— |
| ITパスポート | サービスメッシュの目的を理解する。「分散したサービス間の通信管理やセキュリティを自動化する仕組み」であることを覚えておきましょう。 |
| 基本情報技術者 | サービスメッシュの構成要素メリットを理解する。特に「Envoyプロキシ(サイドカー)によるトラフィックの傍受」や「mTLSによるセキュリティ確保」が、アプリケーションコードから分離されている点が問われます。 |
| 応用情報技術者 | OSMの特徴文脈を理解する。「オーケストレーション環境におけるマルチクラスタ運用」の課題解決策として認識すること。また、OSMがSMI (Service Mesh Interface) に準拠しており、軽量であることを知っておくと、選択肢問題で有利になります。 |
| 全レベル共通 | コントロールプレーンデータプレーンの役割分担は頻出です。OSMが具体的にどの役割を担っているのか(コントロールプレーンとしての機能)を整理しておきましょう。 |

関連用語

  • Istio: サービスメッシュの代表的な実装の一つ。機能が豊富ですが、設定が複雑になりがちです。
  • Linkerd: 軽量で使いやすさに重点を置いたサービスメッシュ実装。
  • Envoy: OSMのデータプレーンとして使用される高性能なオープンソースのプロキシ。
  • SMI (Service Mesh Interface): サービスメッシュの標準仕様。OSMはこの仕様に準拠しています。
  • サイドカーパターン: アプリケーションコンテナの隣で、ネットワークやセキュリティといった横断的な機能を提供するプロキシコンテナを配置する設計パターン。

情報不足: これらの関連用語の詳細な解説は、本記事のスコープ外であるため、情報が不足しています。特にIstioとの機能比較や、SMIの具体的な仕様については、別途専門的な資料を参照することをおすすめします。

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この記事を書いた人

両親の影響を受け、幼少期からロボットやエンジニアリングに親しみ、国公立大学で電気系の修士号を取得。現在はITエンジニアとして、開発から設計まで幅広く活躍している。

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