PagerDuty(ページャーデューティー)

PagerDuty(ページャーデューティー)

PagerDuty(ページャーデューティー)

英語表記: PagerDuty

概要

PagerDutyは、サーバーやアプリケーションの監視システムから発せられる大量のアラート(警告)を効率的に管理し、適切な担当者(オンコール担当者)に迅速かつ確実に通知するためのインシデント管理プラットフォームです。特に、LinuxサーバーやWindowsサーバーなどのOSレイヤーで発生した障害やパフォーマンス低下を検知する「監視とロギング」の次のステップ、「アラート運用」を自動化・高度化するサービスとして利用されます。従来のメールや社内チャットだけでは見落とされがちだったクリティカルなインシデントに対し、電話やSMSといった緊急性の高い手段で担当者を確実に「叩き起こす」仕組みを提供しています。

詳細解説

PagerDutyは、システム運用の可用性(SLA: Service Level Agreement)を維持するために不可欠な、インシデント対応の迅速化を目的としています。サーバーOSの監視とロギングが「問題を発見する目」だとすれば、PagerDutyはその目が見つけた問題を「誰に、いつ、どのように伝えるか」を制御する司令塔の役割を果たします。

サーバー監視からアラート運用への流れ

サーバーOS(Linux/Windows)環境では、CPU使用率、メモリ消費、ディスクI/O、プロセス異常、特定のログメッセージなどを監視ツール(Zabbix、Prometheus、Datadogなど)が常にチェックしています。これらの監視ツールが設定された閾値を超えた異常を検知した際、そのイベントはPagerDutyに送信されます。

PagerDutyの大きな特徴は、単なる通知ツールではなく、インシデントの「ノイズ削減」と「適切な割り当て」を行う点にあります。

主要コンポーネントと仕組み

  1. インテグレーション(連携):
    PagerDutyは、数百種類の監視ツールやチケット管理システムと連携できます。サーバーOSの監視ツールからAPI経由でアラートデータを受け取り、それを標準化されたインシデント情報に変換します。これにより、監視ツールが異なっても、統一された形式でアラートを扱えるようになります。

  2. オンコールスケジューリング(当番管理):
    24時間365日、システムを監視し続けるチームにとって、誰がいつ対応するかの管理は複雑です。PagerDutyは、曜日や時間帯に基づいた柔軟なシフト表を作成でき、インシデント発生時に自動的にその時点の担当者を特定します。

  3. エスカレーションポリシー(昇格規則):
    これがPagerDutyの心臓部の一つです。もし最初の担当者がアラートを受け取ってから指定時間内(例:5分以内)に応答(Acknowledge)しなかった場合、自動的に次の担当者、さらにその次の管理者へと通知対象を切り替えます。この「エスカレーション」機能により、「担当者が寝ていて気づかなかった」という重大なリスクを防ぎます。

  4. 通知手段の多様性:
    電子メールだけでなく、スマートフォンのプッシュ通知、SMS、そして確実に相手を起こすための電話(音声通話)など、複数の手段を組み合わせて通知します。これにより、クリティカルなサーバー障害を見落とす可能性を極限まで低減します。

アラート運用における価値

サーバーOSの運用において、監視ツールは大量の警告を発することがあります。これらの警告の多くは、すぐにシステムに影響を与えない「ノイズ」であることも少なくありません。PagerDutyは、似たようなアラートを自動的にグルーピング(抑制)し、真に緊急性の高いインシデントのみをオンコール担当者に届けることで、運用チームの疲弊を防ぎます。これは、サーバー監視における「監視とロギング」の成果を、人的リソースを効率的に使って処理する「アラート運用」の理想的な形と言えるでしょう。

具体例・活用シーン

活用シーン:深夜のデータベースサーバー障害

あなたが運用するECサイトのバックエンドにあるデータベースサーバー(Linux OS上で稼働)が、深夜2時に突如として応答速度が低下し始めました。

  1. 検知: サーバーに導入されている監視エージェントが、データベースプロセスの遅延を検知します。
  2. イベント送信: 監視ツールがこの異常を検知し、APIを通じて即座にPagerDutyにイベントを送信します。
  3. 担当者特定と通知: PagerDutyはオンコールスケジュールを確認し、その日の担当者Aさん(自宅で就寝中)を特定します。PagerDutyはAさんのスマートフォンに強力なプッシュ通知を送り、さらに5秒後にSMS、10秒後に電話を発信します。
  4. 応答と対応: Aさんは電話でアラートを受け取り、状況を確認。スマートフォン上のPagerDutyアプリで「インシデントを受領(Acknowledge)」ボタンを押します。これにより、他のチームメンバーへの通知が一時的に停止し、Aさんが対応を開始します。
  5. エスカレーション: もしAさんが通知から5分以内に応答しなかった場合、PagerDutyは自動的に次の担当者Bさんへ電話通知を切り替え、迅速な対応を保証します。

比喩:眠らないITシステムの消防署

PagerDutyの役割は、「眠らないITシステムの消防署」だと考えると非常に分かりやすいです。

従来の監視システムは、火災報知機(アラート)を鳴らすだけでした。報知機が鳴っても、誰が、いつ、どの電話番号に連絡するか、誰も決めていなければ、初期消火は遅れてしまいます。

PagerDutyは、この報知機(監視ツール)と完全に連携した、高度に組織化された消防署です。

  • オンコールスケジューリングは、当直の消防士のシフト表です。
  • インテグレーションは、火災報知機から直接消防署に緊急連絡が入る仕組みです。
  • エスカレーションポリシーは、「当直隊員が応答しなかったら、すぐに副署長に連絡する」という厳格な手順です。
  • 多様な通知手段は、電話、サイレン、無線など、確実に担当者に指令を伝えるための手段です。

サーバーOSの障害という「火災」が発生した際、PagerDutyは最も適切な担当者(消防士)を、最も確実な方法で招集し、迅速な鎮火(復旧)を可能にする、IT運用における生命線なのです。

資格試験向けチェックポイント

PagerDutyという具体的な製品名がITパスポートや基本情報技術者試験で直接問われることは稀ですが、その背景にある概念や対応プロセスは、応用情報技術者試験やサービスマネジメント分野で非常に重要です。特に「サーバーOS(Linux Server, Windows Server) → 監視とロギング → アラート運用」という文脈で何を理解すべきかを確認しましょう。

| 試験レベル | 問われる概念 | PagerDutyとの関連(チェックポイント) |
| :— | :— | :— |
| ITパスポート | サービスマネジメント、SLA | システムの可用性を高めるための「インシデント管理」の重要性を理解します。障害発生から復旧までの時間を短縮することがSLA達成に直結します。 |
| 基本情報技術者 | インシデント管理プロセス、ITIL | 障害発生時、検知(監視)→ 記録 → 分類 → 対応(エスカレーション) → 終結という一連の流れの中で、PagerDutyが「対応」フェーズを自動化・強化するツールであることを把握します。 |
| 応用情報技術者 | DevOps、SRE(Site Reliability Engineering) | 現代的なシステム運用において、アラートのノイズ削減や自動化がなぜ重要かを問われます。SREでは「トイル(手作業による無駄な作業)」の削減が重視されますが、PagerDutyは手動のオンコール対応や通知作業を自動化し、トイル削減に貢献します。また、インシデント対応のデータ(MTTR: 平均復旧時間など)を収集し、運用改善に役立てる点も重要です。 |
| 全レベル共通 | 監視と運用の連携 | サーバー監視ツール(Zabbixなど)がアラートを出すだけでは不十分であり、それを確実に人に繋ぐ「アラート運用」の仕組みが必須であるという構造を理解しておくべきです。PagerDutyは、この連携を担う中心的な役割を果たします。 |

試験対策のヒント

  • 「エスカレーション」という用語が出た場合、対応が遅れた場合に上位者や次の担当者に引き継ぐ仕組みを指すことを思い出してください。
  • サーバーOSの監視が「検知」であり、PagerDutyのようなツールが「対応/通知」であることを区別して整理すると、サービスマネジメントの理解が深まります。

関連用語

  • 情報不足

注記: この記事は、サーバーOS環境における監視とロギングの文脈でPagerDutyの役割を解説するために作成されました。

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この記事を書いた人

両親の影響を受け、幼少期からロボットやエンジニアリングに親しみ、国公立大学で電気系の修士号を取得。現在はITエンジニアとして、開発から設計まで幅広く活躍している。

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