パリティ

パリティ

パリティ

英語表記: Parity

概要

パリティとは、ストレージシステムにおいて、格納されているデータが正しいかどうかを検証したり、ディスク障害発生時に失われたデータを復元したりするために使用される冗長情報(検査データ)のことです。特に、複数のディスクを組み合わせて冗長性を高めるRAID(Redundant Array of Independent Disks)技術において、データ保護の要となる重要な概念です。このパリティ情報があるおかげで、ストレージデバイス(HDDやSSD)の一部が故障しても、システム全体のデータ保全性を維持できるのです。

詳細解説

目的と背景:なぜストレージにパリティが必要なのか

私たちが扱うデータは非常に価値が高いため、ストレージデバイスに保存する際には、故障や破損からデータを守る仕組みが不可欠です。ストレージデバイス(HDD, SSD, NVMe)の分野では、一台のディスクの故障が全体のデータ損失に直結しないように、「ストレージ冗長化と保護」の技術が発達しました。パリティは、この「データ保護」の文脈において、最小限の追加コストで最大限の復元能力を提供する役割を担っています。

もしパリティがなければ、ディスクが故障した場合、そのディスクに保存されていたデータは永久に失われてしまいます。しかし、パリティ情報があれば、残りの正常なデータとパリティ情報を組み合わせることで、失われたデータを計算によって復元できるのです。これは非常に画期的な仕組みだと感じます。

動作原理:パリティの計算方法(XOR演算)

パリティの計算は、主にXOR演算(排他的論理和)という論理演算を用いて行われます。これは、ITの基礎を学ぶ上で避けて通れない、非常に重要な概念です。

  1. データのグループ化: まず、複数のデータブロック(例えば、ディスクA、ディスクB、ディスクCに分散されているデータ)を一組として扱います。
  2. パリティの生成: これらのデータブロックに対してXOR演算を行います。XOR演算は、「入力が奇数個(1つ)のときだけ出力が1になる」という性質を持っています。この演算結果が、新しいパリティブロック(P)として生成されます。
  3. 分散配置: 生成されたパリティブロックは、元のデータブロックとは別のディスク(例えばディスクD)に保存されます。これが冗長性を生み出します。

この仕組みの優れている点は、もしディスクBが故障してデータが失われたとしても、残りのディスクA、ディスクC、そしてパリティPを使って、再度XOR演算を行うことで、失われたディスクBのデータを正確に逆算できる点にあります。まるで魔法のようですが、これは数学的な確実性に基づいています。

RAIDとパリティ

パリティは、特にRAID 5やRAID 6といった高度な冗長化レベルで中心的な役割を果たします。

  • RAID 5: データを複数のディスクに分散して書き込み、さらにパリティ情報もディスク全体に分散して書き込みます。これにより、ディスク1台の故障までであれば、データを完全に保護し、復元することが可能です。
  • RAID 6: 2種類の独立したパリティ情報(PとQなど)を生成し、分散配置します。これにより、同時にディスク2台が故障しても、データを保護し続けることができます。RAID 6は、大容量化が進む現代のストレージ環境において、データ保護の堅牢性を高めるために非常に重要視されています。

このように、パリティは単なる検査データではなく、ストレージの信頼性を担保するための心臓部と言えるでしょう。

具体例・活用シーン

パリティの概念を理解するには、その機能がどのようなシーンで役立っているかを知ることが一番です。ここでは、具体的な例と分かりやすい比喩をご紹介します。

1. 活用シーン:企業サーバーのデータ保護

大規模なデータベースサーバーやファイルサーバーでは、通常RAID 5やRAID 6が採用されています。

  • RAID 5の例: 4台のHDDでRAID 5を構成しているとします。データは3つのディスクに分散され、残りの1つのディスクにパリティが保存されます(パリティは実際には全てのディスクに分散されます)。ある日、HDDの1台が物理的に故障しました。システム管理者は、故障したディスクを新しいディスクに交換します。このとき、システムは残りの3台のディスクに保存されているデータとパリティ情報を用いて、故障したディスクが持っていたデータを再構築(リビルド)し、新しいディスクに書き込みます。このリビルドプロセスこそが、パリティ情報の真価が発揮される瞬間です。

2. アナロジー:チームの在庫管理と「チェック係」

パリティを理解するための身近な比喩として、「チームでの在庫管理」を考えてみましょう。

ある倉庫で、Aさん、Bさん、Cさんがそれぞれ異なる種類の部品(データ)を管理しています。

  • Aさんの部品数:10個
  • Bさんの部品数:20個
  • Cさんの部品数:30個

ここで、「チェック係」(パリティ)のDさんを置きます。Dさんは、3人の合計数ではなく、XOR演算に相当する特殊な「チェック値」を計算して記録しておきます。例えば、この特殊な計算の結果が「40」になったとします(これがパリティPです)。

ある日、Bさんが急に休んでしまい、Bさんの部品数がわからなくなりました。しかし、Aさんの部品数(10)、Cさんの部品数(30)、そしてチェック係Dさんの記録(40)があれば、特殊な計算(XORの逆算)を行うことで、Bさんの部品数(20)を正確に導き出すことができるのです。

この「チェック係D」の記録こそがパリティであり、ディスク障害(Bさんの欠勤)が発生しても、他の情報から失われた情報(Bさんの在庫)を完全に復元できる仕組みを端的に表しています。パリティは、データ復元のための「保険」や「設計図」のようなものだと考えると、理解しやすいのではないでしょうか。

資格試験向けチェックポイント

IT資格試験、特に基本情報技術者試験や応用情報技術者試験では、「ストレージの冗長化」に関する問題は頻出テーマです。パリティに関する知識は、RAIDの理解と直結します。

| No. | 必須知識と出題パターン | ITパスポート / 基本情報 / 応用情報 |
| :— | :— | :— |
| 1. | パリティの役割 | 基本情報・応用情報: パリティが「誤り検出」だけでなく、RAIDにおいては「データ復元」に使われる冗長情報であることを理解してください。単純なチェックサムとの違いが問われることがあります。 |
| 2. | RAIDレベルとの関係 | ITパスポート・基本情報: パリティを使用する代表的なRAIDレベル(RAID 5、RAID 6)を暗記してください。特にRAID 5はディスク1台の故障、RAID 6はディスク2台の故障まで許容できる点を明確に区別できるようにしましょう。 |
| 3. | パリティの計算とオーバーヘッド | 基本情報・応用情報: パリティの計算にXOR(排他的論理和)が使われることを覚えてください。また、パリティ情報のために必要なディスク容量は、システム全体の容量を圧迫する(オーバーヘッドとなる)ことも理解しておくと、性能やコストに関する問題に対応できます。 |
| 4. | リビルド(再構築)の概念 | 基本情報・応用情報: ディスク障害発生後、新しいディスクに交換し、パリティと残りのデータを用いて失われたデータを復元する作業を「リビルド」と呼びます。このリビルド中に別のディスクが故障すると、RAID 5ではデータが失われるリスクがある、といった応用的なリスク管理の知識も問われます。 |
| 5. | パリティの配置 | 応用情報: RAID 5ではパリティがディスク全体に分散配置される(ローテーションされる)ことで、特定のディスクへの負荷集中を防ぎ、高速化に寄与している点も重要です。 |

パリティは、ストレージデバイスの物理的な信頼性が低下しても、論理的にデータを守り抜くための「データ保護」の要であり、試験対策においても最重要項目の一つであると肝に銘じておきましょう。

関連用語

パリティを深く理解するためには、それが組み込まれているシステムや、計算の基礎となる概念を知っておく必要があります。

  • RAID (Redundant Array of Independent Disks): 複数のディスクを組み合わせ、性能向上や冗長性を実現する技術です。パリティはRAID 5やRAID 6の基盤となっています。
  • XOR演算 (排他的論理和): パリティデータを生成するために使用される基本的な論理演算です。
  • 冗長性 (Redundancy): システムの一部が故障しても、全体が機能し続ける能力。パリティはこの冗長性を確保するための手段です。
  • ECC (Error Correction Code): 誤り訂正符号。パリティはECCの一種として分類されることもあります。より強力なECCは、単なる検出だけでなく、誤りを訂正する能力も持っています。

関連用語の解説をさらに充実させるためには、各用語を個別の記事として作成する必要があります。現在、関連用語の情報不足のため、これらの用語の深掘り解説はできませんが、パリティがこれらの技術と密接に関わっていることを理解することが大切です。

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この記事を書いた人

両親の影響を受け、幼少期からロボットやエンジニアリングに親しみ、国公立大学で電気系の修士号を取得。現在はITエンジニアとして、開発から設計まで幅広く活躍している。

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