PCIe(ピーシーアイエクスプレス)
英語表記: PCIe
概要
PCIe(ピーシーアイエクスプレス)は、コンピュータの内部で、CPUやチップセットと、グラフィックボード、高速SSD、ネットワークカードといった高性能な拡張デバイスを接続するために使用される、現代において最も重要な高速インターフェース規格です。この規格は、従来のパラレルバス方式であったPCI(Peripheral Component Interconnect)規格の後継として開発され、通信方式を根本的に見直すことで、データ転送速度を飛躍的に向上させました。コンピュータの構成要素間でのデータ交換を担う「バス構造」において、現代の要求される膨大なデータ処理速度を実現するための「バス規格と進化」の頂点に位置する技術と言えます。
詳細解説
バス構造のボトルネック解消と進化の背景
コンピュータの構成要素間の接続において、データ転送速度は常に性能のボトルネックとなりがちでした。特に、PCIのような古いバス規格は、複数のデバイスが一本の通信路を共有する「共有バス」方式、かつ「パラレル(並列)通信」を採用していました。パラレル通信は、多くのデータビットを同時に送る方式ですが、信号のタイミングを厳密に同期させるのが非常に難しく、高速化を図ろうとするとノイズや信号の遅延(スキュー)が発生しやすくなるという物理的な限界に直面していました。
PCIeは、このバス構造の課題を解決するために、二つの重要な進化を遂げました。この進化こそが、「バス規格の進化」において最も注目すべき点です。
動作原理:シリアル通信とポイント・ツー・ポイント接続
一つ目の進化は、通信方式のシリアル(直列)化です。シリアル通信では、データを一つずつ順番に送りますが、その速度を極限まで高めることで、パラレル通信よりも遥かに高い実効速度を実現しています。信号の同期が容易になり、ノイズの影響を受けにくくなるため、超高速化に適しているのです。
二つ目の進化は、接続方式のポイント・ツー・ポイント(P2P)化です。PCIeは、ホストコントローラー(CPUやチップセット)と各デバイスが一対一で専用の通信路を持つ方式を採用しています。これにより、従来の共有バスのように複数のデバイスが通信路を取り合う必要がなくなり、あるデバイスがデータを転送している間も、他のデバイスの通信が妨げられることがありません。これは、「データバス」「アドレスバス」「制御バス」の機能を統合し、効率的にデバイスとホスト間の通信を行う上での画期的な仕組みです。
レーン構造と帯域幅の決定
PCIeの転送能力は、「レーン」(Lane)と呼ばれる通信路の数によって決定されます。一組の送信用ペアと受信用ペアで構成されるこのレーンは、必要に応じて柔軟に数を組み合わせることができます。一般的な表記としては、x1(1レーン)、x4(4レーン)、x8(8レーン)、x16(16レーン)があり、レーン数が多いほど、同時に扱えるデータ量(帯域幅)が増加します。
例えば、高性能なグラフィックボードは、大量のデータを瞬時に処理する必要があるため、通常x16レーンを使用します。一方、一般的なネットワークカードや小さな拡張カードはx1やx4レーンを使用することが多いです。この柔軟な帯域幅の割り当てが可能になったことで、様々な「コンピュータの構成要素」の要求に無駄なく応えることができるようになりました。
世代による継続的な進化
PCIe