PostScript(PDF: ピーディーエフ)

PostScript(PDF: ピーディーエフ)

PostScript(ポストスクリプト)

英語表記: PostScript

概要

PostScriptは、Adobe Systems社によって開発された、プリンタなどの出力装置に対して文書のレイアウトやグラフィックスを正確に指示するための「ページ記述言語(PDL: Page Description Language)」です。これは、コンピュータの構成要素の中でも特に「出力データ形式」というカテゴリに位置づけられ、デバイスや解像度に依存しない高品質な印刷を実現するために利用されます。PostScriptデータは、文字や図形を数学的な計算式で定義するベクターグラフィックスを基本としており、DTP(デスクトップパブリッシング)分野の標準技術として広く普及しました。

詳細解説

PostScriptは、単なる画像ファイル形式ではなく、プリンタが実行すべき一連の描画命令を記述した高度なプログラミング言語である、という点が非常に興味深いポイントです。この特性こそが、コンピュータの構成要素における「出力データ形式」の役割を革新的に進化させました。

印刷品質の革命

PostScriptが誕生した最大の理由は、画面上の表示と印刷結果を一致させること(WYSIWYGの実現)でした。従来の印刷方式では、プリンタの解像度が上がると、コンピュータ側で作成したデータがその解像度に追いつけず、文字や線がギザギザになってしまう問題がありました。

PostScriptは、この問題を解決するために、描画情報をすべてベクターデータ(ベクトルデータ)として扱います。例えば、「円を描く」という命令は、中心座標、半径、色といった情報で構成されます。この数学的な命令は、プリンタの解像度が300dpi(Dots Per Inch)であろうと、2400dpiであろうと、プリンタの能力を最大限に活かして、可能な限り滑らかで正確な円として出力されるのです。これは「出力データ形式」として、品質保証の面で極めて優れています。

PostScriptインタープリタの存在

PostScriptの動作の核心は、プリンタ側に搭載された「PostScriptインタープリタ」と呼ばれる処理エンジンにあります。

一般的なプリンタでは、コンピュータ(ホスト)側で文書全体をビットマップ画像に変換してからプリンタに送りますが、PostScript対応プリンタではプロセスが異なります。

  1. ホストコンピュータ: アプリケーションがPostScript言語で記述された命令書(ファイル)を作成します。
  2. データ転送: この命令書がプリンタに送られます。ファイルサイズは、ビットマップデータに比べて非常に小さくて済みます。
  3. インタープリタによる解釈: プリンタ内部のインタープリタが命令書を一行ずつ読み解き、描画の計算をその場で行います。
  4. ラスター処理(RIP): 計算結果を、実際にトナーやインクを定着させるための点(ドット)の集合、すなわちビットマップデータ(ラスターデータ)に変換します。この最終変換プロセスをRIP(Raster Image Processor)と呼びます。

このように、複雑な計算処理をプリンタ側で行うことで、当時の性能が低かったホストコンピュータの負荷を大幅に軽減することができました。これは、プリンタ(プリンタ・音響出力装置)が単なる出力デバイスではなく、自律的な処理能力を持つ「賢い装置」へと進化する大きなきっかけとなったのです。

PostScriptとフォント

PostScriptは、フォント技術においても革命をもたらしました。PostScript Type 1フォントなどのアウトラインフォントは、文字の形状もベクターデータとして定義されているため、サイズや変形を自由自在に行っても、品質が損なわれることがありません。これは、美しいタイポグラフィが求められるDTP業界において、絶対的な標準となりました。

具体例・活用シーン

PostScriptが「出力データ形式」として、私たちのデジタルライフにどのような影響を与えてきたかを見てみましょう。

1. プロフェッショナル印刷の基盤

PostScriptは、特にデザインや印刷業界で今なお重要な役割を果たしています。

  • DTP環境: Adobe IllustratorやInDesignといったプロ用デザインソフトウェアは、PostScriptを前提として設計されてきました。これらのソフトウェアで作成されたデータは、PostScript形式で出力され、印刷会社の高解像度イメージセッターに送られます。
  • 色分解: 商業印刷では、CMYKの4色に分解して印刷しますが、PostScriptはこの色分解の処理を正確に記述し、意図通りの色再現を可能にしました。

2. PostScriptの進化形:PDF

私たちが日常的に利用しているPDF(Portable Document Format)は、PostScriptの技術を基盤として開発されました。PostScriptが主に印刷を目的としていたのに対し、PDFは「電子的な文書の配布と閲覧」を主要な目的としています。PDFがどの環境でもレイアウト崩れを起こさずに表示できるのは、PostScriptのベクター描画技術を受け継いでいるからなのです。

比喩による理解

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

両親の影響を受け、幼少期からロボットやエンジニアリングに親しみ、国公立大学で電気系の修士号を取得。現在はITエンジニアとして、開発から設計まで幅広く活躍している。

目次