RAID 1(ミラーリング)(レイドワン)
英語表記: RAID 1 (Mirroring)
概要
RAID 1は、複数のストレージデバイス(HDDやSSD)に全く同じデータを同時に書き込むことで、データの冗長性を確保する技術です。これは「ミラーリング」(鏡像化)とも呼ばれ、ストレージデバイス(HDD, SSD, NVMe)の故障からデータを守るための、最も基本的かつ強力な手法の一つです。この技術は、ストレージ冗長化と保護を実現するRAID技術の中で、特に高い信頼性と即応性を誇ります。
詳細解説
RAID 1の最大の目的は、ストレージデバイスの故障が発生した場合でも、システムの運用を継続できるように、データの可用性(アベイラビリティ)を極限まで高めることです。これは、この技術が「ストレージ冗長化と保護」というミドルカテゴリに属する理由そのものです。
構成と動作原理
この構成を実現するには、最低でも2台の同一容量のストレージデバイス(HDDまたはSSD)が必要です。ユーザーがデータを書き込む際、RAIDコントローラは全く同じデータを両方のドライブに同時に書き込みます。この仕組みが、あたかも鏡に映したようにデータが複製されることから「ミラーリング」と呼ばれています。
もし片方のドライブが故障しても、残りの健全なドライブが即座に処理を引き継ぎますので、システムは停止しません。ユーザーは故障が発生したことすら気づかない場合があるほど、シームレスに動作し続けるのが大きな利点です。これは、ストレージ冗長化と保護という文脈において、最も確実でシンプルなデータ保護手段と言えるでしょう。
容量効率とパフォーマンス
RAID 1の運用上のトレードオフとして、利用できる容量は総容量の半分になってしまうという点があります。例えば、2TBのHDDを2台使っても、利用できるのは2TBのみです。これは冗長性を確保するための必要なコストであり、データ保護の確実性を優先するシステムでは許容される設計です。
パフォーマンス面では、書き込み処理においては、2台に同時に書き込む必要があるため、シングルドライブよりも若干速度が低下することがあります。しかし、読み込み処理に関しては、RAIDコントローラが2台のドライブから並行してデータを読み出すように最適化できるため、高速化が期待できる場合があるのが特徴的です。
故障時の対応
RAID 1の優れた点は、故障発生後の復旧作業(リビルド)の容易さにもあります。ドライブが故障して交換された際、健全なドライブから新しいドライブにデータをコピーし直す「リビルド(再構築)」作業が必要になります。RAID 1は単純なコピーであるため、パリティ計算などが不要なRAID 5やRAID 6といった他の複雑なRAIDレベルよりも、リビルド時間が短く、システムへの負荷も低い傾向にあります。この迅速な復旧能力も、ストレージ保護の観点から非常に評価されています。本当に安心できるシステム設計ですね。
RAID 1は、高速性よりも「絶対にデータを失わないこと」を最優先する、ストレージデバイスの運用において欠かせない技術です。
具体例・活用シーン
RAID 1(ミラーリング)は、その高い信頼性から、特に停止が許されない環境や、データの価値が非常に高い環境で活用されます。
1. ツインノートの比喩(アナログな理解)
あなたが非常に重要な会議のメモを取っていると想像してください。RAID 1は、あなたがペンを走らせるたびに、隣に座っている秘書が全く同じ内容を別のノートに同時に書き写しているようなものです。もしあなたのノートをコーヒーで濡らしてしまっても(ドライブ故障)、秘書のノートが完全に同じ内容を保持しているため、会議は滞りなく続けられますし、メモの内容が失われることもありません。これがミラーリングの仕組みです。データが常に二重化されているため、片方が壊れても安心なのです。
2. サーバーのOSドライブ
小規模なファイルサーバーやウェブサーバーにおいて、OS(オペレーティングシステム)が格納されている起動ドライブにRAID 1がよく用いられます。OSが故障するとシステム全体が停止してしまいますが、RAID 1であれば、片方のドライブが壊れても業務を継続でき、システム管理者は業務時間外に落ち着いてドライブ交換を行うことができます。これはストレージ冗長化の典型的な例です。
3. 重要なデータベースシステム
企業の会計システムや顧客管理システムなど、一瞬たりとも停止が許されないミッションクリティカルなデータベースでは、RAID 1が採用されることが多いです。特に書き込み頻度がそれほど高くない環境であれば、高い冗長性が得られるRAID 1は非常に魅力的です。
4. 個人利用のNAS(ネットワーク接続ストレージ)
家庭で写真や家族の動画など「絶対に失いたくないデータ」を保存するためのホームサーバー(NAS)でも、RAID 1は人気があります。大切な思い出を物理的な故障から守ってくれる、頼もしい存在です。
資格試験向けチェックポイント
RAID 1は、IT Passport、基本情報技術者試験、応用情報技術者試験のいずれにおいても、「ストレージ冗長化と保護」の基本として頻出します。以下の点を確実に押さえておきましょう。
- 名称の確認:「ミラーリング」=RAID 1であることを確実に覚えましょう。RAID 1はデータの鏡像化(コピー)を行う技術です。
- 最低必要ドライブ数:冗長性を確保するために、最低必要ドライブ数は2台です。
- 利用可能容量:利用できる容量は全体の50%(半分)になる点が、計算問題や知識問題として出題されやすいです。例えば、4TBのドライブを2台使った場合の利用可能容量は4TBです。
- 耐障害性:ドライブが1台故障してもデータは保護され、システムは停止しないという点が重要です。これは高い可用性(アベイラビリティ)を実現します。
- RAID 0との対比:RAID 0(ストライピング)と対比させ、「高速だが冗長性がない(耐障害性なし)」RAID 0に対し、「冗長性が高いが容量効率が悪い」のがRAID 1、とセットで理解しておくと、RAID技術全般の理解が深まります。
- 文脈の理解:「ストレージ冗長化と保護」の文脈で、最もシンプルかつ確実なデータ保護手法として位置づけられていることを理解してください。
関連用語
- 情報不足 (RAID 0(ストライピング)、RAID 5(パリティ分散)、ホットスペア、冗長性、可用性などの関連用語を列挙することが望ましいですが、現時点では情報が不足しています。)
