ROM(ROM: ロム)
英語表記: ROM (Read-Only Memory)
概要
ROM(ロム)は、主記憶装置(メインメモリ)の一種であり、その名の通り「読み出し専用」のメモリです。このメモリの最大の特長は不揮発性である点にあります。これは、コンピュータの電源を切った後でも、内部に記憶された情報が失われることがない、という非常に重要な性質を意味しています。主記憶装置のもう一方の雄であるRAM(ランダムアクセスメモリ)が電源喪失で情報を失う(揮発性)のとは対照的で、システムを立ち上げるための基本的なプログラムや設定を永続的に保持するために、コンピュータの構成要素として欠かせない存在となっています。
詳細解説
ROMが、コンピュータの構成要素における主記憶装置(メインメモリ)の中でどのような役割を果たすのかを理解することは、システムの動作原理を知る上で非常に重要です。
1. 主記憶装置におけるROMの目的
メインメモリの役割は、CPUがすぐにアクセスできる場所にプログラムやデータを置いておくことです。RAMは処理中のデータを一時的に高速に保持しますが、ROMはシステムが起動するために絶対に必要な命令群(ファームウェア)を恒久的に保存する目的で組み込まれています。
具体的には、ROMには「BIOS (Basic Input/Output System)」や、その後継である「UEFI (Unified Extensible Firmware Interface)」といった、コンピュータが電源投入直後に実行すべき初期化プログラムが格納されています。CPUは電源が入ると、まずこのROMにアクセスし、自身や接続されている周辺機器(キーボード、マウス、ハードディスクなど)が正しく機能するかを確認し、その後、OS(オペレーティングシステム)を起動するための手順(ブートストラップローダー)を実行します。もしこのROMがなければ、コンピュータは自身を起動する方法を知らないため、ただの箱になってしまうでしょう。本当に大切な「取扱説明書」を内部に保持しているのがROMなのです。
2. 書き換えの難しさと進化
初期のROMは「マスクROM」と呼ばれ、製造時に一度だけ情報を焼き付けると、ユーザーが書き換えることは原理的に不可能でした。これは、非常に信頼性が高い反面、プログラムの修正ができないという欠点がありました。
しかし、技術の進歩に伴い、ROMは進化を遂げました。
- PROM (Programmable ROM): 一度だけ書き込みが可能なROMです。
- EPROM (Erasable Programmable ROM): 特殊な紫外線を使って内容を消去し、再書き込みが可能なROMです。
- EEPROM (Electrically Erasable Programmable ROM) / フラッシュメモリ: 電気的に内容を消去・書き換えができるようになったROMの進化形です。現代のコンピュータシステムにおいて、BIOS/UEFIの設定情報を保持したり、デジタルカメラやスマートフォンなどのデータ保存に広く使われている「フラッシュメモリ」は、このEEPROMの技術を応用した、非常に高速で大容量のROMの一種と考えて差し支えありません。
主記憶装置(メインメモリ)という文脈では、ROMはRAMほどの高速なデータ処理能力は求められませんが、「決して消えてはならない基本命令を確実に保持する」という、システムの根幹を支える役割を担い続けています。特に現代では、BIOS/UEFIの更新のために書き換え可能なフラッシュメモリが利用されることが一般的です。
3. 主記憶装置としての位置づけの重要性
ROMは、RAMのように処理中の大量のデータを一時的に保持する場所ではありませんが、CPUが最初にアクセスする場所であるため、メインメモリ(主記憶装置)の範疇に含まれます。このROMの存在によって、コンピュータは安定した初期状態から動作を開始できるのです。もし、電源を切るたびにOSを起動する方法を教え直さなければならないとしたら、非常に困りますよね。ROMは、この手間を省き、システムの信頼性を担保する、縁の下の力持ちなのです。
具体例・活用シーン
ROMの役割を理解するための具体例やアナロジーは、主記憶装置(メインメモリ)の働きを把握する上で非常に役立ちます。
-
【アナロジー:石碑とノート】
コンピュータの主記憶装置を、あるプロジェクトの作業スペースだと想像してみてください。- RAM は、作業員(CPU)が今まさに使っているデータや計算結果を書き込む「ホワイトボード」や「ノート」のようなものです。高速で書き換えが容易ですが、作業が終わったり、電源(照明)が消えたりすると、内容はすぐに消えてしまいます(揮発性)。
- ROM は、そのプロジェクトの「基本理念」や「起動手順」が刻まれた「石碑」や「永久保存版のマニュアル」のようなものです。書き換えは非常に困難か、特定の手段(紫外線や電気的処理)を使わなければできませんが、電源が切れても内容は絶対に消えません(不揮発性)。
コンピュータが起動する際、CPUはまずこの石碑(ROM)に刻まれた「起動手順」を読み出し、それからホワイトボード(RAM)を使って実際の作業に取り掛かる、という流れです。
-
【活用シーン:システムの起動】
私たちがPCの電源ボタンを押した瞬間、内部で何が起こっているかを見てみましょう。- 電源オン:CPUはあらかじめ決められたアドレス(番地)にあるROMにアクセスします。
- BIOS/UEFIの実行:ROMに格納されたプログラム(BIOS/UEFI)が実行され、まずCPU自身やメモリ、グラフィックカードなどのハードウェアが正常かチェックします(POST: Power-On Self Test)。
- ブート処理:チェックが完了すると、ROMは次にOSがどこにあるか(HDDやSSD)を探し出し、OSを主記憶装置(RAM)にロードする処理を始めます。
この一連の流れは、ROMがなければ絶対に実現できません。ROMは、コンピュータが「自分自身」を認識し、世界(OS)と繋がるための最初の一歩を担っているのです。
-
【活用シーン:組み込み機器】
私たちが日常で使うデジタル家電(電子レンジ、エアコン、ゲーム機など)の多くにもROMが使われています。これらの機器の動作を制御するプログラム(ファームウェア)は、頻繁に書き換える必要がないため、ROMに格納されます。これにより、電源を抜いても設定や基本動作が変わらない安定性が実現されています。
資格試験向けチェックポイント
ITパスポート試験、基本情報技術者試験、応用情報技術者試験といったIT資格試験において、ROMは主記憶装置の基本概念として頻繁に出題されます。特にRAMとの対比、不揮発性、そして現代のROMの進化形に関する知識が問われます。
| 試験項目 | 典型的な出題パターン | 学習のヒント |
| :— | :— | :— |
| ROMの基本特性 | ROMの特性として正しい記述を選べ。A. 揮発性である。B. 読み出し専用である。C. 高速なデータ書き込みが可能である。 | 不揮発性と読み出し専用(Read-Only)を必ずセットで覚えましょう。「電源を切っても消えない」ことが最大のポイントです。 |
| RAMとの対比 | 主記憶装置におけるRAMとROMの役割の違いについて問う問題。 | RAMは「作業領域」(揮発性)、ROMは「設計図・基本命令」(不揮発性)と明確に区別してください。CPUから見たアクセス速度は通常RAMの方が高速です。 |
| BIOS/UEFI | コンピュータの起動時に最初に実行されるプログラムが格納されている場所はどこか。また、そのプログラムの名称は何か。 | ROMに格納されているのはBIOSまたはUEFIであり、システムの初期設定とOSの起動処理を担当していることを理解しましょう。この文脈は、コンピュータの構成要素の理解に直結します。 |
| ROMの進化 | EEPROMやフラッシュメモリに関する記述として適切なものを選べ。 | 現代のROMは電気的に書き換え可能になっていることを理解することが重要です。特にフラッシュメモリは、SSDやUSBメモリにも使われている、書き換え可能な不揮発性メモリの代表例として頻出します。 |
| 階層構造の理解 | 主記憶装置(メインメモリ)に分類されるものはどれか。 | ROMは主記憶装置の一部であり、補助記憶装置(HDD, SSDなど)とは明確に区別されることを理解してください。CPUが直接アクセスできるメモリであることを押さえることが重要です。 |
関連用語
-
情報不足
(関連用語としてRAM、BIOS/UEFI、フラッシュメモリ、不揮発性メモリなどを挙げるべきですが、テンプレートの指示に従い、ここでは「情報不足」と記述します。読者様におかれましては、これらの用語を合わせて学習されることを強く推奨いたします。)