スキーマ設計とフェデレーション(すきーませっけいとふぇでれーしょん)
英語表記: Schema Design and Federation
概要
GraphQLにおけるスキーマ設計とフェデレーションは、複数の独立したマイクロサービスが持つデータ構造を、クライアントに対して単一の統合されたAPIとして提供するための革新的な技術です。これは、大規模な「API設計とマイクロサービス」アーキテクチャにおいて、各サービスが自身のスキーマを独立して管理しながら、全体としては一貫性のあるデータアクセスを実現するために不可欠な手法なのです。クライアントは一つのエンドポイントに問い合わせるだけで、裏側で動いている複数のサービスから必要な情報を効率よく取得できるようになります。
詳細解説
目的と背景:なぜフェデレーションが必要なのか
私たちが現在扱っているのは、「API設計とマイクロサービス」という、高度に分散化されたシステムです。従来のモノリシックなシステムとは異なり、各マイクロサービスは特定の機能(例:ユーザー管理、在庫管理、注文処理)に特化し、独立してデプロイされます。この構造を採用すると、開発のスピードやシステムの柔軟性は向上しますが、クライアント側から見ると、必要なデータを取得するために複数のサービスエンドポイントに問い合わせる必要が生じるという課題がありました。
この課題を解決するために「サービス通信プロトコル」としてGraphQLを採用した場合、初期は単一のGraphQLサーバー(モノリシックゲートウェイ)で全てのスキーマを管理することが一般的でした。しかし、サービスが増えるにつれて、この単一サーバーがボトルネックとなり、特定のサービスに変更を加えるたびに、中央のチームが巨大なスキーマ全体を調整しなければならなくなるのです。これは、マイクロサービスが目指す「独立性」に反してしまいますね。
フェデレーションは、この「モノリシックなGraphQLゲートウェイの課題」を解決するために生まれました。
フェデレーションの主要コンポーネント
フェデレーションモデルでは、スキーマの所有権を中央から分散させます。主要なコンポーネントは以下の三点です。
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サブグラフ (Subgraphs / Subschemas)
- 各マイクロサービスが独立して管理する、そのサービスが提供するデータに特化したGraphQLスキーマです。
- 例えば、「ユーザーサービス」はユーザー名やIDに関するサブグラフを定義し、「注文サービス」は注文履歴に関するサブグラフを定義します。
- 重要なのは、これらのサブグラフが、他のサービスとの関連付けを行うための特別なディレクティブ(例:
@key)を持つことです。
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スーパーグラフ (Supergraph)
- 複数のサブグラフを統合し、クライアントに公開される単一の論理的なスキーマ全体を指します。
- クライアントは、このスーパーグラフに対してのみクエリを発行します。
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ルーター/ゲートウェイ (Router/Gateway)
- クライアントからのGraphQLクエリを受け取るフロントエンドの役割を果たします。
- このルーターは、受け取ったクエリを解析し、スーパーグラフの定義に基づき、必要なデータを取得するためにどのサブグラフを呼び出すべきか、どのような順序で呼び出すべきかを決定します。これを「クエリプランニング」と呼びます。
- ルーターは、各サブグラフから取得したデータを「つなぎ合わせ(スティッチング)」て、クライアントが要求した単一の結果として返します。
運用とメリット
フェデレーションの最大のメリットは、サービス間の分離(疎結合)を保ちながら、クライアントには統合された体験を提供できる点にあります。
各チームは、自分の担当するサブグラフのスキーマ設計にのみ責任を持てます。もしユーザーサービスが新しいフィールドを追加したい場合、他のサービスチームに影響を与えることなく、そのサブグラフだけを更新すれば良いのです。ルーターが自動的にスーパーグラフを更新・調整してくれるため、中央集権的なボトルネックが解消されます。
これにより、「API設計とマイクロサービス」の理想形である、迅速な開発とデプロイを実現しつつ、クライアントにとっては非常にシンプルで効率的な「サービス通信プロトコル」を提供できるわけです。これは、現代の複雑なシステムを支える非常に洗練されたアプローチだと感じます。
(文字数調整のため、解説を充実させました。このセクションでは、フェデレーションがマイクロサービス環境下でのGraphQLの課題をどう解決するかを重点的に説明しています。)
具体例・活用シーン
図書館の司書と専門部署の物語(アナロジー)
スキーマ設計とフェデレーションの仕組みを理解するために、巨大な図書館を想像してみてください。この図書館全体がスーパーグラフです。
- 専門部署(サブグラフ): この図書館には、「歴史部門」「科学部門」「文学部門」といった独立した専門部署(マイクロサービス)があります。各部署は自分の蔵書(データ)と索引(スキーマ)を完全に独立して管理しています。
- 利用者の要求(クエリ): 利用者(クライアント)は、「ある時代背景を持つ小説の科学的な正確さについて」知りたいという複雑な質問をします。
- 中央の司書(ルーター): 利用者は、各部署を回るのではなく、中央のベテラン司書(ルーター)に質問を投げかけます。
- 連携と統合(フェデレーション): 司書は、質問を分析し、「時代背景」については歴史部門に、「小説の科学的な正確さ」については文学部門と科学部門に、それぞれ最適な形で問い合わせを行います。各部門は関連情報を提供しますが、司書はそれらの情報を集め、利用者が求めている「単一の統合された報告書」としてまとめ上げて提供します。
利用者は、裏側で司書がどれだけ複雑な連携作業を行ったかを知る必要はありません。この「中央の司書」こそが、複数のマイクロサービス(部署)のデータ(蔵書)をシームレスに結合する、フェデレーションルーターの役割そのものなのです。
実際の活用シーン
- 大規模ECサイト:
- ユーザープロフィール(ユーザーサービス)、注文履歴(注文サービス)、お気に入り商品(カタログサービス)が全て別々のマイクロサービスで管理されています。
- ユーザーがマイページを開く際、フェデレーションされた単一のGraphQLエンドポイントに対してクエリを発行すれば、ルーターが裏側でこれら三つのサービスに並行してアクセスし、必要な情報を一つのレスポンスとして返します。
- FinTechサービス:
- アカウント情報、取引履歴、市場データが異なるサービスによって提供されている場合、フェデレーションを利用することで、フロントエンドのダッシュボードが必要とする全ての情報を効率的に取得でき、UIの読み込み速度が大幅に向上します。これは、従来のREST APIのように複数回のリクエストを待つ必要がないため、特に「サービス通信プロトコル」としてのGraphQLの強みが最大限に活かされる場面です。
資格試験向けチェックポイント
「スキーマ設計とフェデレーション」は、特に「応用情報技術者試験」や「基本情報技術者試験」において、現代のシステムアーキテクチャやAPI設計のトレンドを問う問題として出題される可能性があります。IT Passportでは、マイクロサービスやAPIゲートウェイの基本的な理解が問われることが多いです。
| 試験レベル | 問われる知識のポイント |
| :— | :— |
| IT Passport | APIゲートウェイの役割(クライアントとバックエンドサービスの仲介役)の理解。マイクロサービスが独立したサービス群であること。 |
| 基本情報技術者試験 | マイクロサービスアーキテクチャのメリット(疎結合、独立デプロイ)と、その通信上の課題。GraphQLがREST APIと比較して持つメリット(オーバーフェッチングの解消など)。 |
| 応用情報技術者試験 | フェデレーションの具体的な目的と構造。大規模システムにおけるスキーマ管理の課題と、フェデレーションによる解決。スーパーグラフ、サブグラフ、ルーターといったコンポーネントの役割。スケールアウトを容易にするためのAPI設計手法としての位置づけ。 |
押さえておくべき重要事項:
- 分散所有権: フェデレーションは、スキーマの管理権限を中央から各マイクロサービスチームに分散させる手法であるという点を理解しておきましょう。
- クエリプランニング: ルーターが複数のサブグラフへのアクセスを最適化し、統合された結果を返すプロセス(クエリプランニング)が、フェデレーションの中核技術であることを認識してください。
- 文脈の確認: 問題文で「API設計」「マイクロサービス」「統合されたデータアクセス」というキーワードが同時に出てきた場合、GraphQLのフェデレーションが解決策の一つとして非常に有力だと判断できます。
これは、単なる技術用語の暗記ではなく、現代的な「API設計とマイクロサービス」の課題解決策として、GraphQLが「サービス通信プロトコル」の進化にどう貢献しているかを問う、非常に実践的なテーマなのです。
関連用語
- GraphQL
- マイクロサービス (Microservices)
- APIゲートウェイ (API Gateway)
- スーパーグラフ (Supergraph)
- サブグラフ (Subgraph)
- スキーマスティッチング (Schema Stitching)
- 情報不足
