TIM (Thermal Interface Material)(ティム)
英語表記: TIM (Thermal Interface Material)
概要
TIM(Thermal Interface Material)は、高性能な半導体チップ(CPUやGPUなど)と、それらを冷却するヒートシンクなどの間に塗布または挟み込まれる、熱伝導性の高い中間材料のことです。チップから発生した熱を、効率よく冷却装置へと逃がす「熱の橋渡し役」を担う、極めて重要な素材なのですね。この素材の性能が、半導体の「パッケージングと実装」における「放熱と信頼性」を決定づけると言っても過言ではありません。TIMの主な役割は、接触面に存在する空気層(エアギャップ)を排除し、熱抵抗を最小限に抑えることにあります。
詳細解説
なぜTIMが必要なのか:熱抵抗の排除
現代の半導体デバイスは、プロセスルールの微細化が進むにつれて集積度が向上し、単位面積あたりの発熱量(熱密度)が著しく増大しています。この熱を適切に処理できなければ、チップの温度が設計許容範囲を超えてしまい、動作不良や早期故障(信頼性の低下)を招いてしまいます。
冷却装置(ヒートシンク)を半導体パッケージの表面に直接密着させようとしても、製造上の限界から、両者の表面には必ず肉眼では見えない微細な凹凸が存在します。この凹凸の間にできる空気の層は、熱を伝えにくい性質(熱伝導率が非常に低い)を持っているため、熱の移動を大きく妨げてしまいます。この、熱の移動を妨げる度合いを「熱抵抗」と呼びますが、空気層は非常に大きな熱抵抗源となるのです。
TIMの役割と動作原理
TIMの最大の目的は、この半導体パッケージ表面と冷却装置表面との間に存在する微細な隙間を完全に埋め、空気層を排除し、熱抵抗を最小限に抑えることにあります。
TIMは空気よりも遥かに高い熱伝導率を持つ素材でできており、隙間を充填することで、熱が空気層を経由するのではなく、高効率なTIM層を経由してヒートシンクへ流れるように設計されています。これにより、半導体技術における「パッケージングと実装」の段階で、チップの信頼性を最大限に引き出すための「放熱」環境が整うわけです。
TIMの種類と半導体パッケージング
TIMには、その形態や用途に応じていくつかの種類があり、高性能な半導体の信頼性を長期的に維持するため、適切なTIMの選択が不可欠です。
- サーマルグリス(Thermal Grease/Compound)
- ペースト状の材料で、最も一般的に使用されます。非常に薄く塗布できるため、接触面間の隙間を精密に埋める能力に優れています。主成分はシリコンオイルや、熱伝導性の高いフィラー(酸化アルミニウム、窒化ホウ素など)を混ぜたものです。
- サーマルパッド(Thermal Pad)
- シート状またはゲル状の固体材料です。塗布の手間がかからず、絶縁性を持つものが多いのが特徴です。比較的大きな隙間を埋めるのに適していますが、グリスに比べると熱抵抗はやや高くなる傾向があります。
- 金属系TIM(Liquid Metal TIM, Solder TIMなど)
- 究極の放熱性能が求められるハイエンドな半導体パッケージングで利用されます。液体金属(ガリウム系合金など)は非常に高い熱伝導率を持ちますが、電気伝導性があるため、取り扱いに注意が必要です。
パッケージ内部のTIMの重要性
近年の高性能プロセッサでは、熱対策はパッケージの外側だけでなく、パッケージ内部でも重要になっています。CPUやGPUのシリコンダイ(チップ本体)は、通常、IHS(Integrated Heat Spreader:集積ヒートスプレッダ)と呼ばれる金属の蓋で覆われています。この「シリコンダイ」と「IHS」の間にも熱抵抗を減らすためにTIMが使われており、これを一般的に「TIM1」と呼びます。
かつてはTIM1に安価なグリスが使われていましたが、高性能化に伴い、熱伝導率の極めて高い「ソルダリング(はんだ付け)」や液体金属TIMが採用されるケースが増えています。この内部TIMの性能が、チップの限界温度を大きく左右するため、半導体メーカー各社は、この「パッケージング」技術に注力しています。IHSの外
